「今から時間あるかな?」
と不二君が言った。
「あるけど、なに?」
「一緒に、行きたいところがあるんだ」
不二君は微笑みながら私の手を取った。
そのままグイグイと引っ張られる。
「ちょっ…なに? どうしたの?」
「いいからいいから」
そしてそのまま不二君と夜道を歩いて数十分。
「ねぇ本当にどこまで行くの?」
不二君が相手だから怖くはないのだけど、少し不安になる。
あまり遠くまで行くわけにもいかない。
時間が時間だ。
私がそう問いかけると不二君は立ち止まり
「ねぇ、目を閉じて」
そう言った。
ちょっと不思議に思ったが言われるままに目を閉じた。
するとあごの辺りに熱を感じる。
これは不二君の手。
その手が私のあごを上に向けた。
「目、開けて」
声に反応してゆっくりゆっくり目を開いた。
「うわ。凄い」
夜空に散らばる無数の星。
住宅街から離れた場所なので星がよく見える。
「どうしても一緒に見たくて」
不二君は優しく微笑む。
「ありがとう」
今日は七夕。
素敵な日。