「なぁコレいる?」
と忍足君に声をかけられた。
忍足君の手には小さな笹。
「コレって笹?」
「さっき後輩に貰ったんやけど、俺使い道ないし」
「使い道って、短冊にお願い事書いて」
「ちょお待って…男がひとりでそんなことしても寒いだけやん」
「あーねー。かもね」
「かもやない。絶対」
「でも、せっかく忍足君が貰ったものだし…私が貰うわけにはいかないよ」
そう言うと忍足君はしばらく考えて
「そや! じゃあ一緒に使うて」
「え?」
「一緒に短冊書いて飾ろうや」
「え、でも」
「自分に断られたらコレ捨てるはめになるなぁ…」
と忍足君はニヤッと笑う。
「わかったよぅ、じゃあ…お言葉に甘えて」
「よっしゃ!」
忍足君は持っていた鞄の中からノートを取り出し、長方形型に破った。
「コレが短冊ってことで」
ちゃんと用意しとくべきやったわ。と彼は笑った。
私はペンを取り出し、忍足君に渡す。
「ありがとさん」
帰り道、ふたりしてしゃがみ込んで短冊に願いを書く。
成績があがりますように。
私は無難にこう書いた。
だって忍足君の前だし…。
「成績て…無難やなぁ自分」
「無難でいいの。忍足君は何て書いたの?」
「笑わん?」
「笑わないよぅ」
忍足君は照れたように笑いながら自分の書いた短冊を見せてくれた。
来年も今日みたいに隣に彼女がいますように
「……」
「名前までバッチリ書くんはちょっと照れてん」
「…えと、あのー」
「来年も自分とこうやって過ごせたらええなぁって思って」
もしかして?
「この願い叶ったらええなぁ」
隣で忍足君が笑う。
「叶う…かもだね」
私も笑う。