やはり変であろうか。
■手塚国光の場合■
手塚国光(中3)の目の前には笹の葉がある。
今日という日付(七月七日)と吊るされた短冊からして間違いではないだろう。
今日は七夕だ。
そしてコレは願いをかける笹。
手元には短冊とペンが置いてある。
これは願い事を書いて吊るせ。ということだろう。
しかし
この笹は公衆にさらされた位置にある。
学校への通学路傍の店の催物といったところだろう。
さぁ考えろ、国光。
中学生としては行っていい行為だ。
現に短冊をよく見ると見覚えのある字がある。
テニス部員も書いて吊るしているようだ。
しかし
『手塚国光』がウキウキと心弾ませて短冊を書いていいものだろうか。
哀しいことだが俺は…老け顔だ……。
いつもいつもに「おっさん」とか「大学生が中等部? 何年ダブッてんの?」などと
言われている。
そんな俺が短冊に願いを込め吊るしている様など世間から見るとどう思われるだろうか?
制服を着ているから学生と思われるか?
思われたとしても高校生だろうか?
「塚? 何してんの?」
この世で俺のことを『塚』と呼ぶ女は一人しかいない。
。
できれば今一番会いたくなかった人物だ。
「否、何もしていない」
「短冊握り締めて?」
くすくすと笑っている。
だから会いたくなかったんだ。
「塚ってば可愛い〜vv」
「……」
「じゃあ私も書こうっと☆」
「?」
「どうせ一人じゃ書きにくいとか思ってたんでしょう? 一緒に書いあげるvv」
「……すまない」
こういうところが好きなんだ。
さりげなく気遣ってくれる。
「いいってコトよ。えーっと『塚の老け顔が若々しくなりますようにv』あとは『塚の眉間
の皺がとれますように。ジジくさい』あと……」
「……」(怒)
「ウソだよぅっ」(笑)
全くこの女は。
いつもいつも俺で遊んでいる。(それが嫌でないのだから惚れた弱みってヤツだろう)
「えーっと…じゃあ」(書き書き)
やっと真面目に書き出したか。
さて、俺はどうしようか。
いざ書いていい状況になると悩むな。
部活のことを願うか?
健康? 勉学? ……恋愛……か?
「よいしょっと。アレレ?」
俺が悩んでいる間には書き終わったらしい。
もう短冊を笹に吊るそうとしている。
しかし、届いていないな。
の身長で届く範囲はもう隙間が無い。
従って吊るす場所は上の方になるのだが背伸びをしてもには無理だろう。
「俺が結んでやろうか?」
「塚〜気がきくねぇ♪」
「貸してみろ」
「はい、お願い☆」
ソコは嫌。もうちょっと上。で、右。
などとが指示をするので素早く結べない。
「そこがいいっ」
とが止めた位置は丁度俺の目線の前で、嫌でも書かれている文が見えてしまう。
『告白できる勇気が欲しい』
そう――書かれている。
そうか……には好きな人がいるのか。
「あーっ塚。今読んだっしょ?」
「仕方ないだろう。この位置では」
「まぁいいけど」
「……お前でも勇気が持てないのか?」
「お前でもって…ソレ失礼」
「すまない。何でもすぐ実行できる女だと思っていたからな」
「大抵のことはチャチャーとやっちゃうけど…好きな人だと……特別かな」
「そうか」
の想い人とは誰だろうか?
悔しいじゃないか。
「」
「なぁに?」
「協力してやろうか?」
悔しいが、の幸せは願ってやりたい。
「あー。いい。遠慮しときますー」
この女…アッサリ断りやがって!
「だって塚には協力してもらえないもん」
「…なぜだ?」
相手が俺の知っているヤツか?
それなら協力しやすいはずだが……?
「このニブチン」
「にぶ?」
わからない。
この女はわからない。
なぜ今顔を赤らめている?
どうした? いつもの威勢はドコへ行った?
「……塚のアホ」
「?」
手塚国光(中3)
自ら恋に歯止めをかける少年。
しかし、幸せはそう遠くはない…筈だ。
***反省***
ちょっと壊れ+アホ(笑)な手塚さんになってしまいました。
ゴメンナサーイッッ