◆名前◆
窓の外。
何かを話している2人。
その2人はすぐに別れた。
少女は歩いて校舎に消え、少年は手をぎゅっと力の限り握り締めているのが見て取れる。
何があった?
ガラッ
「ごめんなさいっ!」
肩で息をした、が入って来た。
全速力で走ったのだろう。
髪は乱れ、息は荒く、顔が赤くなっている。
「ちょっと長太郎くんにつかまって」
申し訳なさそうに笑う。
嘘はつかなかった。
でも
何かが、違う。
感じるこの違和感は何だ?
「怒っちゃったよね、ごめんなさい」
しょぼんと表情が曇る。
そして違和感。
「怒ってねーよ。で、何だ?」
パァっと表情が明るくなる。
まだ違和感。
「あのねあのね、図々しいんだけど勉強教えてくれないかなって思って。ほら、跡部くん学年1位だし。ごめんねごめんね、図々しいよね」
「いいぜ。で、今からか?」
「ううんっいつでもいいの。ちょっと、内部試験の自信なくて」
「今日は遅いし、明日からにするか?」
「ほんとに? いいの?」
「ああ、構わない」
この違和感は何だ?
「そうだな、明日の放課後来い」
「わかりました。では」
頭をペコリと下げて立ち去ろうとする。
「待て、送る」
「あはははーっ。いいですよぉ!」
行ってしまった。
残されたのはは違和感。
今の会話。
違和感だらけ。
も跡部自身も。
鳳と何をしていた?
嫉妬心を隠して『いつもの自分』を演じてに接した。
自分の違和感。
だが
のあの違和感は何だ?
何かが違う。
何が違う?
わからない。
ただ感じる違和感。
脳を必死に使って考える。
ドコがナニが違う。
思い浮かべる顔、声。
感じた違和感。
「」
名前を呟いて
考える。
外は先程鳳とを見たグランド。
そして向い校舎の屋上。
ハッとした。
感じた違和感。
それは雰囲気。
いつもの今まで接していたとは違う。
さっきのは屋上で一人でいる時のの雰囲気。
泣いてる、雰囲気。
「どうした?」
もやもやする。
その時、ブブッと響く振動音。
上着の中から携帯を取り出すとメールが届いていた。
『話があります。
いいでしょうか?
鳳』
『何だ?』
『先輩のことで、話があります』
『何時、何所だ?』
『誰にも聞かれたくないので今から部室にいいですか?』
「部長がサボリとは」
薄く笑うと教室を出た。
向うは部室。
この時間はまだ部活中だ。
正レギュラー専用の部室(更衣室)に向う為テニスコート脇を通る。
必死に練習する部員達。
その中に鳳の姿は無い。
もう部室に行っているのだろう。
ややはや歩きで部室に向った。
引退してまだ数ヶ月。
しかしどこか懐かしいと感じる部室の扉を開いた。
室内は何ら変わっていない。
変わったのはロッカーの名前くらいだった。
その室内のベンチから立ちあがり一礼する鳳。
「俺を呼び出すとはいい度胸だな」
冗談まじりのセリフ。
鳳は何の反応もしない。
「跡部先輩、今から言うことはたぶん…いや、絶対俺が言っていいことでは無いと思います。でも、俺が言わなかったら絶対さんからは言わないと思うから」
鳳の余裕の無い顔。
ピリピリした空気。
これは――……
真面目に聴くか。と跡部が椅子に座った。
ゆっくりと開いた口から零れた言葉は
「さんの……前の彼氏…………その…今でも好きだと言う人の名前は
ケイゴ
っていいます」
***反省***
こんな話なの。
ダメ?
名前、ダメかしら??