淡々と、ただ淡々と鳳は語った。
物語を話すように。淡々と。

に大事な人がいた。

名をケイゴ。

2人は優しすぎた、故に苦しんだ。

擦違い、死別。

優しさがを縛っている。



は今もただ想っている。









が頑なに俺の名前を呼ばないことの意味を知った。









◆ネガイゴト◆
































「跡部先輩、どうしますか?」

暫くの沈黙の後、鳳の声だとは信じられないくらいの低い声で言う。

「俺がさんの過去を話したのは……跡部先輩にかわってほしかったからです」


俺に、かわってほしい?


「今のままの跡部先輩じゃ、さんは無理です。跡部先輩の『危うさ』がさんを苦しめます」

「危うさ?」

「……気付いてください。さんに本気なら、気付いてください」






部活に戻ります。と、鳳は静かに去った。




「危うさ?」


鳳の言葉が頭から離れない。


何か、危うい?
俺が――…危うい?


























「あやうい?」

ぽやんとした声が響く。

「あとべくん、あやういの?」
「……ジロー」


部室のドアにもたれるようにジローが立っている。

いつ入ってきたのか? あるいは最初からいたのか。全く気付かなかった。



「ああ。そっか。うーんとねぇ……ちょっと……まってて」
背負っていたリュックからケータイを取り出すと

ぴっ  ぷっ  ぴっ

ゆっくりした手つきで操作しだした。



「そーしん(ぴっ)」



ゴソゴソとケータイをポケットにしまうと
ふにゃっと笑い

「もすこし、まってて。たぶん、すぐ」








沈黙のまま数分。
その間、うとうととするもののジローは眠ることなく跡部を見つめている。


「あとべくん、おれたち、あとべくん、しんぱい」

「あ?」

「ちょうたろうのいいたいこと、わかるよ」




ガチャッ!  ゴッッ!!  「いたい」  「ジロォ! 悪ぃ」


突然部室内が騒がしくなる。

入ってきたのは岳人。ドアを開けた拍子にソレにもたれかかっていたジローが転んだ。

慌ててジローの手を取り、起こすとそのまま手を引きベンチに座らせた。その横に岳人も腰をおろす。
そして、そわそわとドアを見ながら

「跡部跡部! あと3分な」

にっこり微笑んだ。




きっかり3分後。

「しゃあないやん、俺家まで帰っとったんやで」
「俺もだ」
「チャリで信じられん速度だしたわ」
「チェーン外れそうになったしな」

ドアの外が騒がしくなる。


声と一緒に入ってきたのは忍足と宍戸。


「…やっぱ俺等が最後?」


苦笑しながら言うその顔には汗が光り、急いで来たということが分かる。
よほど急いだのだろう、少し外に出るのにもビシッと決める忍足がジャージを着ている。

2人もそれぞれ腰を落ち着けると、誰からともなく




「どうした?」




と声が零れた。





「あ?」

その声は間違いなく跡部に向けられたもの。
しかし跡部にはその質問の意図が理解できない。



「あやうさのわけ。しりたいんだって」



ぽつりとジローが言う。

「ちょうたろうがいったの。あとべくんの『あやうさ』がちゃんをきずつけるんだって」
「っ! ジロー、どこから話を聞いていた?!」
「だいじょうぶ。なんかぜんぶはなしはおわったあとだったから」

ぽやっとジローは笑う。
そんなジローを見て、周りの表情もつられて柔らかくなった。

「『危うい』か。長太郎もいい表現したな」
「そやなぁ。俺なんかが言うたら『甘えん坊』や」
「俺は俺は『ロンリー跡部』!」
「岳人、ソレわけわからん」
「(ムキィーッ)(クソクソ侑士!!)」


「みんな、あとべくんわかってない。ちゃんといわなきゃあとべくんおこっちゃう」


深い皺を眉間に刻んだ跡部にジローが近付き、人差し指を

「えいっ(グサッ!)」

眉間に押し当て、グリグリ回し出す。

「これも、ちょうたろうのいう『あやうさ』のひとつ」
「あ?」
「それもやで、跡部」

忍足が苦笑する。


「あとべくん、にんげんきらいでしょ」






















うちの氷帝メンバーは大変仲良し設定。(笑)
うちのジロちゃんは、ひらながで喋ります。(笑)

全くさん出てませんが、まぁいいじゃないですか。(ダメだと思う…)


あっ忍足さんはテニス部のジャージを着ているわけではないですよ。
部屋でまったりくつろいでる感じのジャージ。ジャージ?……そんな感じの服装ってことです。
説明不足です。ごめんなさい。