眠い。
眠い眠い。
寝たい。


■眠り姫■


「うわーなんか眠そうー」

本日の第一声がソレだった。

「眠いならー寝たらいいのにー」

こんなダラダラした喋り方をするのは『芥川慈郎』しかいない。

しかもそのジローが授業中だというのに話しかけている相手は
そうワタシ。
だったのだ。

「芥川―起きたんなら授業ちゃんと聞け」
「うっわーすごいクマー」
教師の言葉を聞いているのか聞いてて流しているのかジローはに話しかける。

とジローの席は前と後。
前がジローで後がだ。

よってジローはに話しかけるべく真後ろを向いているというワケだ。

「芥川君、前を向いて授業を受けたら?」
「いやージローって呼んでー」

「芥川君(怒)」
「うん。わかったー」

と言ってジローは立ちあがり、の腕を掴んだ。
「は??」
「せんせー、具合悪いから保健室つれてくー」
あまりの突然のことには素っ頓狂な声をあげてしまう。
「ちょっっちょっと待って! 別に私具合悪くなんて」
ジローの外見からは思いもつかない力では引きずられる。
「もぉっちょっと芥川君っっ」
「いってきまーす」

寝ぼけ半分のジローに連れられは教室から出た。

そのままズルズルと引きずられやって来たのは中庭。

「芥川君、どういうつもり?」
「ここねーポカポカ陽気で気持ちいいの」
だから何? と言わんばかりにの眉毛が引きつる。
「寝るのにはサイコーなのー」

ハアッと大きな溜息をつくと
「わかったから、失礼するわね」
は踵を返した。
すると背中から
「眠いなら寝たらいいのに」
先程聞いた同じセリフが聞こえた。

「ねーねー寝ようよー。が一緒に寝てくれたらスッゴイいい夢が見られそうなんだよ
ー」
「芥川君、いくら眠くてもアナタみたいに所構わず眠ることは常識でできないの」
「夢の中じゃ、常識なんてないよー?」

はもう一度溜息をつくと
「今度こそ失礼するわ」
と校舎に向かって歩き出したが

右足が動かない。

足元を見ると右足首にジローの手が絡み付いている。
「芥川君(怒)」
、寝よ」
一瞬蹴り去ろうかと思ったが
ふわふわの明るい髪と寝惚け眼のジローにそんなことはできなかった。

は諦めたかのようにその場に座り込んだ。
そして
「折角のお誘いは嬉しいけど、私不眠症なの」
どうやらはジローを説得するようだ。
「ふみんしょー?」
「慢性的に眠れないのよ」
「うわータイヘーン。俺とはムカンケー」
「そうね。無関係ね。……もういいかしら?」
「俺の眠気をわけてあげたいー」

と心配そうにジローはの顔を覗きこむ。
悔しいがこの一連の仕草はとてもじゃないけど可愛い。
というか可愛すぎる。

「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくわ」
「だめー」
立ちあがろうとしたの膝にジローの手が乗る。
「今の、見てらんないのー1回スカッと寝なきゃダメだよ」
スッとジローが立ちあがるとの視界が逆転した。

「題して、ひざまくらー」
と上からジローの声が降ってくる。
「あああっ芥川君??」
ジローの言う通り今、の頭はジローの膝の上にある。
「眠くな―る眠くなーる……」
ジローが唄うように呟くように
囁いた。

そうするうちにジローの方がウトウトと頭が下がりだす。

「芥川君っ眠いんだったら私を離してっそして寝……」

言い終わる前にジローの頭が降ってきた。

「っ」

そして頭同士というか

唇同士がぶつかった。

「――――っっっ」
が声にならない声を出す。
すると
「ごめんー今のワザとー」
目の前でジローが優しく笑った。

「――――っっっ(混乱中)」
「今の眠くなるおまじないー。俺もう寝ないで枕になっててやるからは寝ろよ」
「芥川君……」
「安心していいよー。俺がずっといるから」
「え?」
「ずっと傍にいるから」

くらっ

それは眩暈のような眠気。

「う……そ…………ゴメッあくた…………が……」

はすっと眠りの淵へと落ちていった。

「眠れない子は安心させるのがイチバンなんだって知ってた? 

覚醒モードへと突入したジローは眠っているにもう一度唇を落とした。

「起きたらジローって呼んでね」









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ぐだぐたー。
ヒロイン寝るのはやすぎなんて言っては
だめです(涙)
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