トントントンというリズミカルな包丁の音。
ふんわりとただよってくる味噌汁の香り。

「おはよ…起きて?」

という可愛い奥さん。(現状況では彼女)


ってのが男の浪漫やと思っとったけど



「おきてくださいまし」

にやられたら

あ゛―……

と思うのは何故だろう…



◆スタート◆




「はいはいはいはい。遅刻しますわよ! シャキッとなさって!!」

窓をカラッと開けてが微笑む。
あぁ…コイツここに泊まったんや…と実感する。

昨日突然がココに住むと言い出した。
制服と教科書だけを持って…

ぶっちゃけ困った。
仮にも俺ら中学生やし。
親の金で養ってもらっとる身分やし。
勝手に同棲なんかできるかい?! と。

とりあえず落ち着け! と自分に言い聞かせの家に電話した。
そしたら、あんのクソジジィ「が邪魔なら追い出せ」でプツン。
それが可愛い孫に言うセリフか??

その態度にも怒って「もう二度と家には帰りません! 忍足の人間になるー!!」って大騒ぎ…

とりあえず落ち着け! と今度はに言い聞かせ自分の実家に電話。
この状況を何も報告せんと勝手に話を進めるわけにはいかん。
親父は仕事でおらんかったけど……
ちゃん? いいんじゃない、一緒に住んで。ただし自分たちはまだ学生なんだってことをわきまえてちょうだいね。パパにはママから言っといてあげるから心配いらないわよ。学校には面倒だから黙っておきなさいね。これから楽しくなりそうね」
これが母親のセリフだろうか??

……。

俺が実家とうまくいってない理由はコレ。


うちのおとんとおかん…
頭おかしいねん…
俗に言う天然ってやつ…

せやから俺がいっつも苦労する。
将来は家の仕事継ぐ覚悟はあるといえばあるけど…
ちょっとこのアホ両親と距離おきたいねん…せめて大学卒業するまで

ずっと一緒におったら俺までうっかり者になってしまう…

そうなったら終わりやで…俺がしっかりせなあかん。

まぁんとこと比べたら恵まれた家やと思うけど…
天然のおとんとおかんて…けっこう息子はつらんんやで…(絶対跡部には見せたない…)



「んぎーっ」と声をあげて怒りに任せてはケータイをへし折ろうとしていた。
それを止めて、俺とは外に出た。

「絶対帰りませんからね!!」

まだ頭に血がのぼっている

「歯ブラシとか…いるやろ?」

って一言言うたらは大きな目をいっそう見開いてビックリしていた。
それが昨日の晩のこと。





まだ眠く、あくびがこぼれる。
昨日はにベットを譲って俺は床で寝たから体の節々が痛い。

「自分…朝から元気やな」

眼鏡をかけて改めての顔を見る。

「あら? だって…ねぇ」

ふふっと笑う。気色悪い…。

「侑士の寝顔…かわいいんですもの」

ぐふぐふと笑う。マジ気色悪い…。

「自分…キモイで?」
「失礼ですわねー!」

そんなはほっといて顔を洗う。

「あっ侑士、勝手に作っちゃったけど朝食は和食でよかった? あっそれと同棲のこと、
もう皆にはバレてますからー」

…………。
………………………………。

朝飯が和食ってのはいい。全く問題ない。

問題があるのは、その後の言葉…。

「どういうこと? ちゃん?」

「お茶は緑茶? 麦茶?」
「冷たいのん…ってちゃん??」

は麦茶をそそぎながら

「さきほど跡部さんから電話がありましたの」
「電話?」
「はい。ちょっと部のことで。その時にぃ」

うふふ。とが笑う。

「その時に? まさかちゃん喋ったの?」
「いいえっ! 侑士が…」
「俺?!」
「私侑士の隣で寝てたでしょう?」
「隣っていうてもベットの上と下やけど…」
「私電話をベットのなかでとってしまったのです」
「はぁ」
「そしたら…侑士の寝息といいますか寝言といいますかが跡部さんに聞こえてしまって」
「なっ!!」
「跡部さんがからかうものですから…」

からかう…て
きっと

「お前まさか今忍足の部屋か?」
「ナッ…ナニヲイッテイマスノ??」
「動揺してんじゃねーよ、バーカ。忍足の声聞こえたぜ? お前らもそうかついに」
「ナッ…ナニヲイッテイマスノ!!」
「別にいいんじゃねーの? 付き合ってんだろ?」
「でっですから」
「顔に出したらすぐに岳人とかに気づかれるぜ? 気ぃつけろよ」
「ですからっ!! 跡部さんが考えているようなことはありませんっ!!」
「はぁ? じゃあなんでソコにいんだよ?」
「家がないから」
「家?」
「あ゛」
「詳しく話せよ」
「…あ゛―」


って感じで跡部に尋問されたんやろ…
あーそや。
今こそ使うべき言葉がある。

「…トホホ」

「侑士? 何言ってますの?」

学校行ったら絶対からかわれるんや。
間違いないわ…。
あかん。
登校拒否したくなる。

「侑士?? どうなさったの? うつむいて」

俯きたくもなるわ。

でも

まぁ

これで踏ん切りがついたかな…

「今日部活終わったら」

「はい?」

朝食の準備を済ませたが俺の目の前に座る。

「買い物行こか?」

「お買い物?」

のベットとか…イロイロ…いるやろ?」

「え? あ…でも」

「金ならあるし…テレビ買い替えようと思っとった金がある」

「それはテレビに使って下さい!! 今日から私が床で寝ますから! 居候の身ですし」

「あのテレビまだ使えるし…ソレ捨ててまで新しいテレビ買えって言うん?」

「じゃあそのお金は貯金しててくださいまし!」

「せやかて」

「だいたいこの部屋にベットを二つも置いたらベットで部屋が埋まってしまいます」

まぁ、ごもっともな意見。

「じゃあ布団」

「侑士に買っていただくつもりはございません! ただでさえ甘えているのにそこまで甘えられません!!」

そんな言い合いをしているとピンポンとチャイムが鳴った。

まさか跡部だろうか?

ちょっとビビりつつ玄関を開けるとそこには見知らぬ兄ちゃんがひとり。

「これをお嬢様に」

そう言うと封筒を渡された。
お嬢様? あぁか。

「コレ、家からっぽいで?」

そう言って封筒を渡すとあからさまに嫌そうな顔をした。
ぶすーっとした顔のまま封筒をあけると

「…侑士…お買い物やっぱり行きます」

「なんで? どないな心境の変化や?」

「じゃーん!!」

が取り出したのは通帳。
しかも可愛いイラストの。

「これは、私が子供の頃から貯めていたものですの。お母様が送ってくださったみたいです」

「よかったやん」

「はい」





こうして、俺との同棲生活が始まった。
半ば…強制的に…。









同棲って難しいですよね…
これから先…さ。どう進めようかしら?と。
これだから何も考えずに書くとダメなのよ!!(自分に怒る)


ココの忍足さんは実家とある意味仲が悪い(笑)でも仲良し家族設定です。
天然の両親に苦労する忍足さん…って可愛いと思いません??!!
アコだけ?かしら???