自慢じゃないけど、というか自慢にならないけど
私の彼はホント不器用です。


◆不器用な彼。◆


全てにおいて不器用なんです。

本人に言ったら怒るけど、要領悪いと思います。

テニスに夢中になるのは構いません。

というかカッコイイです。

でも

私生活。もうちょっと器用にやってみませんか??





<月曜日>
日曜日が部活だったらしく朝からとっても眠そうです。
「おはよう」
と声をかけると
「…ハヨ」
コレです。
それが彼女に言う挨拶ですか?
「おはようございます、宍戸先輩」
相棒(?)の鳳くんが声をかけると
「おう! じゃ部活行くか」
コレです。
もぅ慣れましたけど。
スタスタとテニスコートに向う彼の後ろから「すみません」と鳳くんが私に笑いかけ、追いかけて行く。
これがいつもの月曜日。


<火曜日>
火曜の朝も月曜と一緒。
今日は授業中の彼を観察。

寝てます。

芥川くんまでとは言いませんが

だいたい、寝てます。



「ノート見せてくんね?」

と寄ってきます。

「高いよ?」
「…激ダサ」
「ノート見せてって寄ってくる男のが激ダサ」
…」
「はい、どーぞ」

ノートを差し出して終わり。

でもね、ほんと要領悪いの。
毎回授業中寝て、授業終わってノート借りに来て休み時間に必死に写すの。
でも、休み時間中に全部写せなくて、それで次の授業が始まる。
で、その授業も寝て、その授業のノートも借りに来る。
悪循環してるって本人全くの自覚なし。
それで中途半端に書いたノートが大量発生。
中間・期末前にまたノート貸してって来るの。
だったらねぇ
テスト前に1回だけ借りるのが1番スマートだってこと、いつ気付くかしら?


<水曜日>
今日は休み時間の彼について。

授業の間の休み時間はひたすらノートを写してるの。

で、お昼休みは勝負なのです。

私が勝つか、鳳くんが勝つか。

「亮、今日のお昼…」
「ワリ、鳳と約束してんだ」〔即答〕

……完敗です。

11勝57敗です(戦績を付け出して)

こんなことされたら普通の女の子は怒っちゃうんだぞ。

でも、この不器用な彼は

「明日な」

不器用ながらこういうことをポロッと言うのでそれがたまりません。


<木曜日>
今日は昼食時の彼について。
昨日「明日な」って言ったから意地でも一緒にお昼ご飯です。

彼の今日のメニューは…また?

チーズサンド。

ほんとに大好きみたいです。

でもそれだけじゃ足りないみたいで

「くれ」

私のお弁当を横取りします。

「あーん、して」

とか言いますと
顔を真っ赤にして

「バッバカ」

「ね? あーん」

「激ダサ」

と言いつつも口を開けてくれる。
か わ い いvv
と素直に思ってしまいます。


<金曜日>
今日は部活中の彼について。

直接見に行ったら怒るんだよね。
恥ずかしがるの。
だから私はテニスコートが見える教室から見るしかできないの。
テニスをしている彼はとってもカッコイイです。

でもね。

カッコイイから素敵だから
ちょっと不安になるの。
テニスコートの周りにいる女の子達。
何人が亮目当てなの? って思うとちょっと心がイタイんだよ。
そんなことを思いながら見てると、たまーに彼は私に気付くの。
すぐ顔を真っ赤にするからわかるんだよ。遠くにいても。
それで気付いたらチラチラ私のことを見てくれるの。
そして跡部くんに怒られるの。


<土曜日>
学校はお休みだけど、部活はあってるみたい。
私は部活もしていませんし、亮の応援なんかに行って亮の気をまぎらわせたくないから
家からメール。

『今日暑いけど大丈夫?
 がんばってる?』

数時間して

『まーな』

返信はコレだけ。

不器用+筆不精。

『頑張る亮が大好きだよvv』

数時間しても返事無し。

はぁーあ。




と落胆していたら今日は珍しいことがありました。
なんと電話がかかってきたのです。


『あのよー明日ヒマか?』
「うん。大丈夫だよ」
『じゃあ部活見にこねぇ? 別に嫌だったりめんどくさかったりしたらいいんだけどよ』
「行く! 絶対行くから!!」
『…ん。じゃあな』

こ れ は !
どうした?
亮から見に来いだなんて、はじめてです。
は じ め て !

もぅドキドキです。


<日曜日>
学校に来てみますと

おかしい…

いつもならたくさんいるギャラリーがいません。
テニス部が部活してるって知ったら絶対いるはずなのに。

というか

テニス部員もいません。

私来るの早すぎました?

それか亮に騙されました?

まさか、まさかねぇ。

亮が私を騙すなんて、ねぇ。

ありえないと…信じたい。

「ウス」

…うす?

突然背後から声がしました。
振り返ると大きな男の子。
この子は確か

「樺地くん?」
「ウス。……こっち…です」

ついて来いと言われているようです。

何事?!


そのままついて行く事、数十m。
ついた先は『部室』

そして中から

「宍戸は?」
「鳳が連れ出してる」
「おっし! はやく来ないかなーっちゃん?」
「そーや。ちゃん言うらしいわ」

などと声がします。

? 私??

頭に『?』マークを点滅させていると

ガチャリ

部室のドアが開きました。

そこには

美男子軍団…もといテニス部の正レギュラーの面々。

何事??!!

「おたくがちゃん?」
えーっとこの人は確か忍足くん。
「…はい」
「警戒せんでええから入り入り♪」

手を引っ張られて部室内へ。
中は案外綺麗で広くて正直ちょっとビックリ。

「あのぅ…何か?」
「俺達な、ちゃんに聞きたいことがあるんだ」
元気に言うこの人は向日くん? だと思う。

「何を?」
「宍戸と付き合ってんのか?」
この人は跡部くん。
「っぇぇええ?!(なんですかぁいきなりぃっ!)」
「違うのか?」
「えっとその…はい…一応」

そう答えると

「ほらな言うたやろ!」
「うわっマジで?! 宍戸にはもったいない」
「長いのか?」
「長い? ああ、えっと…半年くらいです」
「半年?! よくもまぁこんだけの長い期間隠し通せたな」
ちゃんから見て宍戸ってどんな感じ??」

正レギュラーの方々は興味津々のようです。
何故?!

「えーっと…とにかく…不器用です。要領悪いし」
「なんや、まんまやん」
「彼女の前くらいはカッコつけてると思ったのにな」
「それから?」
「あとは…あんまり喋ってくれないかなぁ。なんでもテニスと鳳くん優先だし」

「「「はぁ?!」」」

「え?? 私何か変なこと言いました?」

「喋んねぇの?」
「…はい。えっ? 違うの?」
「普通に喋るよな。アイツ」
「ええ?? 『激ダサ』くらいしか言いませんよ?」
「マジかよ?」
「マジです」

「ウス」

「おいちょっと」

樺地くんが「ウス」と言った途端、跡部くんが立ち上がり
「ココ入ってろよ」
私をロッカーに押し込みました。

「ちょっ」
「宍戸の本当の姿、見せてやるよ」

パタン。

ロッカーの扉が閉まるとすぐに

パタン!

部室のドアが開いて亮と鳳くんが入ってきました。(通風孔(?)から見えるのです)

「ったくなんだよ」
「すみません、俺の勘違いで」

などと言っています。
亮はキュッと帽子をかぶりなおすと

「じゃ、俺先にコートの方行ってっから」

と言ってドアに手をかけました。
その姿は心なしかソワソワしています。

「…
跡部くんがボソリと言いました。

ピタッ

文字通り亮の体が固まりました。

ピクリとも動きません。
数秒経って
ギギッと音がしそうなくらいぎこちない動きで亮が跡部くんを見ました。

「…今なんつった?」

声もぎこちないです。

「隠し事なんて酷いやん」
「そーだそーだ! あんっなに可愛い子と付き合ってるなんてさ。このクソクソ宍戸!」
「ウス」

「可愛いって…会ったのか?!」

「見ただけ」〔大嘘〕

「…手ぇ出すなよ」

「アーン?」

は俺の女だ。手、出すなよ」

「俺の女とか言ってるクセに、彼女の前では喋らなくて鳳優先なんだって?」〔ニヤニヤ〕

「なっ!」

「なんで知ってるか知りたいん? それは調べたからに決まってるやん」〔笑顔〕

「うるせぇ!」

「なんで喋んないのー? 言ってみそ☆」

「ばっ!」

「なんでって宍戸先輩照れちゃってるんですよねぇ」〔爽〕

「長太郎!!」

「照れて? あははははーっっ! マジかよ?! 付き合いだしてもう半年だろう?」

「バッ///」

「激ダサは自分やん」〔バカウケ〕

「うっせー! だってな、照れるだろう! 普通!!」

「否」〔キッパリ〕

「跡部は別だ!!」

「自分アホやんなぁ。喋ってくれんてちゃん悲しんどったで? ついでにテニスと鳳優先だから淋しいとも言うとったなぁ」

「…そうなのか? って何でがそう思ってるって知ってんだよ?!」

「だってなぁ」
「さっき」
「本人から聞いたし」

「なっ! お前等会ってねぇって」

「言うたっけ?」〔ペテン師〕

「もういい(諦)絶対には手だすなよ!

「…な? 喋るだろう?」

「? 跡部?」

クックと笑いながら跡部くんがロッカーの扉を引きました。




「!! ????」




この時の亮の顔ったら…顔ったら……

「あははははーっ変な顔―っっ」

つい大声で笑っちゃうくらい、ポカーンとしてました。




私の不器用な彼は昨日も不器用っぷりを発揮して今日私がココに来ることを皆に気付かれたようで…
不器用な彼は後輩にも騙されて…ああ哀れ…
不器用な彼は自分で迎えに行く前に私を樺地くんにさらわれ(?)

でも不器用ながら、堂々と「に手出すな」とか言ってくれました。

今日も不器用っぷり全開ですが

それもまた、彼のいいところ。

私はそんな不器用な彼をずーっと隣で見守ろうと思います。








***反省***
 ヘタレてる。宍戸先輩がヘタレてる。
 ついでに意味わかんないし。ハァ…=3
 甘くないし…
 なんかもぅホントにゴメンナサイッッ