ありえないものを見た。
多分私の視界にはありえないものがある。
いや『多分』ではなくて本当に。

「なにしかとしてんだよ、あーん?」


kleiner Prinz - 40000hits thanks ver. -



思いっきり三白眼の上目遣いで見上げてるのは高さ15cmというかなり小さな物体。
でも我が家にはぬいぐるみとか人形とかそーいうかわいらしいものは置いていない。
ましてや動くものなんてありえない!!
だけどそれはふつーに、ホントにふつーに話しかけてくる。

「おい、きいてんのかよ?」
「いや、聞いてるけど…っていうかこっちのがいろいろ聞きたいんだけど…」
「なんだ、きいてやる」

いや聞いてやるといわれても突込みどころ満載のその姿で何から聞いていいのかわからないのよ。
そんなことは言えないのだけれど、私の目の前にいるのは紛れもなく跡部景吾その人らしい。
全長15cmという脅威の小ささなのだが、よくウチのインターフォンを押せたなぁ、などと思ってみたり。
それを聞いてみたら、

「かばじにやらせた」

とふんぞり返って言い出した。
だけど私が見たときには樺地くんはそこにはいなかった。
いったいいつやらせていつ帰らせたのだろう…そんな疑問を抱きつつも、深く追求するのをやめた。
だって聞いてもわけわかんないもん、多分。

「おい、のどがかわいた」
「…ちまっこくてもわがままなヤツだな」
「なんかいったか、あーん?」

全長15cmですごまれても怖くないってばさ。
いやでもきっと怖いとかそういうことではなくて跡部の口癖のようなものなのだろうか。
そう勝手に決め込むことにして私はキッチンに向かった。
今日この日、家に誰もいなかったことに感謝しよう。
こんなちまっこい自分の恋人を親に見られでもしたら大変だ。
そう思いつつ、お茶を淹れてみたのはいいけれど………どうやって飲ませよう…。

全長15センチよ、全長15センチ!!
私の足の大きさだって20センチ超えてるって言うのに!!
たとえストローをつけてあげたとしてもあのサイズじゃストローの口がでかくて無理だろう、多分。

(………小皿にでも入れるか。)

そんなこんなで悩んだ果てに、私はスプーンを持って跡部のところに戻った。
すると、いたはずのリビングのテーブルの上に、跡部の姿はない。
…どこ行きやがった!!!



ソファーに移動したらしく、そこからひらひらと手を振ってるその姿は、
いつもの跡部からは想像もつかないほどかわいらしく。
憎たらしいのは変わらないのに、小さいせいかやっぱり可愛く映ってしまう。
あぁぁ、私って、私って……

「なにうなだれてんだよ」
「なにと言われても…そんなことより、ホントにどうしてそんなに小さいのよ?」
「そんなものおれがしるわけねぇだろう」

そんな偉そうに言われても私はもっとわかんないから…。
と言いかけたけどあえて黙っておく。
一番びっくりしたのは跡部だろうから。

「それで、どうやって樺地くんに連絡をとったの?」
「でんわをした」
「……どうやって?!」

全長15cmのその身体でどうやって電話するのさ!
そう思って聞いてみると、突然跡部が立ち上がり、テーブルの上の私のケータイを指差した。

「ケータイ?」
「よこせ」

そのケータイを開いて跡部の前に置いてやる。
そうすると。

「……………っっ」
「わらってんじゃねぇよ」

笑うなというのが無理です、跡部サマ!!
だって、あの跡部が、跡部が…!
小さい体を一生懸命伸ばして両手でぽちぽちケータイのボタンを押してるのよ?
可愛いというかなんというか……!

「おまえがどうしたってきいたんだろ」
「ごごごごめん…ぶふっ」
「ふん」

いや、ぷいっとされても!
だめだ、カワイイなぁ、跡部って。
跡部を可愛いと思ったことなんてないけど、こんな小さくなると可愛いーーっ!

「ごめんね、跡部」
「ふん」

拗ねたようにしてソファーに座る跡部はやっぱり可愛くて。
多分いつもの跡部の座り方と一緒なんだろうけど、やっぱり可愛い。

「ちょっとごめんね」

そう言って跡部をちょいっと持ち上げて、テーブルに乗せる。
すると少し嫌そうな顔をした。

「なんで嫌そうなのよ」
「かたい」

………どういう意味だろう?
と考えてみると、どうやらテーブルに座ると硬くて痛いのだろう。贅沢なヤツめ。
まぁでもこのサイズだから、ということでテーブルにタオルを折りたたんでおいてあげると、
そのうえに嬉しそうに座った。
ちょっと満足したようだ。

「はい、跡部」
「…なんだよ?」
「お茶、飲むんでしょう?」

スプーンですくったお茶を跡部の前に出してやる。
しょうがないじゃない、人形サイズの食器なんてウチにはないわよ!!
一瞬むっとした顔をしたので言ってやろうかとも思ったけれど、
さすがに跡部に人形サイズなんていえるわけもなく。

「ちゃんと私が持ってるから」
「…チッ」

イヤイヤながらもその小さい姿でティースプーンからこくりこくりとお茶を飲んだ。
さすがにサイズが小さいのだから必要な水分も少ないんだろうか。
ティースプーンにのったお茶をすべては飲まなかった。

「それにしても、どうしようか」

本当は今日は一緒に出かける予定だった。
だけど跡部がこのサイズじゃ、出かけようもない。

「まぁ、このままのんびりしよっか」
「ったく、なんでこのおれがこんなちいさくなったんだ」
「なんかヘンなものでも食べたんじゃないのー?」
「おまえといっしょにするな」
「失礼なっ!!」

ずいっと跡部の前に顔を出すと、跡部はいくらか落ち込んでいるように見えた。

「…どうしたの?」
「なにがだよ」
「落ち込んでる?」
「んなわけねーだろ」

そう言ってはいるものの、やっぱりどこか落ち込んでるように見える。
あぁ、そっか。
約束、ダメになっちゃったしね。
しかもこんな小さくなっちゃったしね。
気になることはいっぱいあるよね。

「うわっ、なにしやがる」
「んー、手乗り?」
「おまえな…」

私の手のひらの上に跡部を乗せる。
全長15cm。それでもやっぱり跡部は跡部なんだ。
責任感とか強くて、わがままで。
でもやっぱり、どこか憎めなくて。

「あとべ、いーものあげようか」
「いーもの?」
「そ、いーもの」

訝しげに首をひねる跡部のおでこに、触れてみた。
触れるだけのキス。
いつもは絶対しないけど。
するとまん丸に目を開いた跡部の顔がおかしくて。

「かわいーv」
「…おまえ、おぼえてろよ」
「何がー?」

ふてぶてしいいつもの跡部の笑顔が、戻っていた。
やっぱり、そんな風にしてる跡部の方が、跡部らしくていいな、と思った。
それでもやっぱり可愛いのは可愛いんだけどね。
テーブルのタオルの傍に手をもっていくと、そこで跡部はタオルのうえに転がった。
ごろん、と寝転がって、一言、「ねる」とだけ言って跡部は静かな寝息を立て始めた。
不思議なことってあるものなのか、いやありえないとは思うのだけど。
その跡部の寝顔はちょっと可愛いなぁ、なんて思ったりして。
そんなことを考えつつ、跡部の寝顔を見ていたら、いつのまにか私も眠ってしまったようで。





「うわぁぁぁっ」
「…んだよ、うるせーな」

またしてもありえない光景が広がっていた。

「ななななな…」
「なんだよ、寝起きに騒ぐんじゃねぇよ」

そう言った跡部はぎゅっと私を抱きしめた。
いやちょっとまって、苦しい苦しいっ!
え、でもあの、確か跡部はテーブルで寝てたはずだし、っていうかどうしていつもの跡部サイズ?!
頭の中を混乱させて騒いでいると、跡部はまたぎゅっと私を抱きしめた。

「そういやいつのまに戻ったんだ?」
「聞かれても…」
「ソファーに座ったときには小さかったんだけどな」
「いや、いつソファーに移動したの」
が寝てる間だ」

…気づかなかった。
いや、そうじゃなくて。
元に戻ったのはいいと思うんだけど、それは思うんだけど!!

「……元にもどったんだからそろそろ離れてみない?」
「断る」

……断るってなんだーっ!!

「言っておいただろ、おぼえてろって」
「おおおお覚えてろっていわれても!!」
「なんだったらベッドに運んでやるぞ?」
「パスっ!!!」

じたばたしてても、結局はしばらく腕を緩めることなく。
それはそれは楽しそうな跡部景吾だった。
もう小さくなってても絶対可愛がってなんかやらないんだからーーっっ!!!!







Thanks、40,000Hit!
ということで、めでたく40,000Hitを迎えることができました。
ありがとうございますーv
なんだかホントにいつのまにか…
これも皆様のおかげです。
ホントにありがとうございます!!

今回は花音ちゃんと話して小さな王子さまがさらに小さくなりました。(笑)
全長15cm…ものすごくいじりたいんですけど!
ということで少しでも楽しんでいただけたら嬉しいですv

これからもよろしくお願いいたしますvv

『Sweet Cafe』
── Rei ──



40000hitおめでとうございますっ!!
好き好きサイト『Sweet Cafe』の玲さんから記念夢をいただいてきましたっ!
ちっちゃい景吾さんの可愛いこと…!!(思わずはぁはぁしてしまいます)

お忙しいのにいつも素敵な夢を書かれていて凄いなーって思ってます。
これからも頑張って下さい。
応援してますvv