ダイエットしとけばよかった。

今日はそんなことを心から思った日。











女の子だったら誰でも『お姫様だっこ』に憧れると思う。

私だってそう。そう思う女の子。

でも、でもね

唐突にはダメだと思う。

っーか、急にそんなことされたら


「きぃやぁぁぁぁっ!!」


と、とりあえず叫んでしまう。

「うるせぇって。耳元で叫ぶなよ」

笑いながら私を抱きかかえて歩いているのは桃城武。
同じクラス、席は隣、仲の良さはソコソコ。ついでに私は彼に片想い中。
そんな彼が 今 私を だっこ している。





なぜ、こうなったかと言うと
それはつい5分前の出来事。


























昼食を食べ終えたが席を立ち、2歩ほど進んだところで


グニャリ……


なんとも言えない感覚のモノを踏み


「ああっ!!」


桃城の声がすると共に


すっ転んだ。


「っっ〜!!」


転んだ場所が机と机の間の狭い通路いうこともあり、転んだ拍子に周囲の机で体の至る所をぶつけた。


? 大丈夫か?」


頭の上には心配そうな桃城の顔。

足元には・・・・・・・・・・・・・・・バナナの皮


バナナ です・・・・・


一昔前のコントのようにバナナの皮で滑って転んだのです。


な ん で こ ん な 所 に バ ナ ナ の 皮 が 落 ち て る の ? !


「ソレ、俺の食べかす…悪いっっ」


すぐに理由は判明。

どうやら桃城の食後のデザートの残骸が落ちていた。という事のようだ。

「桃くんのばかぁ。痛いじゃん」

涙目で訴えると

「マジでゴメンって! 今度なんかおごってやるから」

平謝り+おごる。という言葉を聞いて許してあげようと思い立ちあがろうとした

その時


ズッキーンッッ!!


右足に違和感。そして痛み。


「……桃くん…………いたい」


どうやら右足首を捻ったか何かで痛めた様だ。
なんとか立てたものの、痛い。
これは保健室に行くべき? と判断し


「桃くん、保健委員さん呼んでぇ。ちょっと行ってくるからぁ」


肩を貸してもらうため保健委員を要請すると


「っしょ」


違うモノが来た。

というか、そこにいた。


「ちょっっ!! ちょっとぉぉっ!!! 桃くんっ?!」


目の前にいた桃城がを軽々と抱き上げると


「桃ちゃん救急車」


ニカッと笑い、歩き出した。





















ということで、私は『お姫様だっこ』されているのです。

どうしようっ恥ずかしい!

廊下を歩く桃くん(と私)は注目の的。

こんな思いするくらいなら痛いの我慢して歩いた方がマシッ!!


「もういいからっ、おろしてぇ」


と言っても


「ダメ」


と言われるだけ。

ああっもうっっ!!

なんてことなの?!


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。

見られるのも、桃くんにだっこされてるのも!

そして

気になる、気になる、気になる!!

昨日夕飯後にケーキとか食べちゃったんだって!

ついでにココ一週間体重計に乗ってないんだって!!

重い? 重い?? 重い?????


もうダメ。聞かずにはいられない。



「私、重いでしょ? だから、ね? おろして」



勇気を出して言ったら


「ぷっ」


笑い声が返ってきた。


ちょっと桃くん? 笑うとはどういうことなのですか?


「マンガみてぇ。マジで女の子ってそんなこと聞くんだな」


ひゃっひゃって笑ってる。

マンガって……


「平気平気。軽い。片手でも持てるくらいだぜ?」


片手って…それはムリだろ。


「もーもーっ恥ずかしいのーっっ」
「顔見られて恥ずかしいなら、ココに顔押し付けてていいぜ?」

ココとアゴで胸元を示す。


ココってソコかい?!
それはそれで、かなり恥ずかしいし!!

「本気で恥ずかしいからっ! 救急車なら走って!! マッハで廊下を駆け抜けて!!」
「了解っ」

走ることで更に注目されたけど、長い間その視線のさらされるよりはマシだと思って諦めることにした。






















「せんっせー」

ガラリと勢いよく保健室に飛び込むと、そこに保健医の姿は無かった。

「いねぇなぁ」

ブツブツ呟く桃くんに椅子の上にゆっくりおろされ、やっと自由になる。

は…恥ずかしかった!!

―、足出してみろ」

ドキドキしている心臓を落ち着かせようと努力していたら目の前に桃くん。

しかも床に膝をついて私を見上げる体勢。

「足ぃ?!」

なんか真顔で足出せとか言ってるし!?

「手当ては桃ちゃんに任せなさい」

いや、任せたくないし!

「えええ遠慮するっ」

「すんなって、俺との仲だろ?」

どんな仲ですか?!

っーか足?! 足??

女の子としての身だしなみは…ギリオッケイ!(セーフッ)

足を触られても見られても大丈夫!

でも、それとこれとは別っっ!

「ほんといいし! 先生戻って来るの待ってるから!」

「『出張につき、用件は各担任へお願いします』ってメモ発見したけど?」

出張かい?!

「じゃあ桃くん担任呼んできてよう」

「ウチの担任が役にたつと思うか?」


……思わない!


私達の担任ってば、ぶきっちょさんで有名。ケガの手当てなんて無理!

「俺に任せとけって♪」

桃くんはウキウキで保健室の棚を荒らしだした。

「……湿布取って。自分で貼るから」

「俺が貼ってやるよ」

うわぁ…ものすごい笑顔だ。

桃くん、すごい笑顔です。

「いいよっ自分でやる」

「いいからいいから」

そう言うと有無を言わさず私の足をとりました。

ああ…恥ずかしい。

上履きと靴下を脱がされ、冷たいタオルで冷やされます。

桃くんの右手で足を支えられて、左手のタオルで冷やされてるのです。

恥 ず か し い ! !

「なぁ、お前ちゃんと食ってるか?」

「は?」

「足首細すぎ。俺の手首とかわんねーじゃん」

いや断然私の足首のが太いし!

「折れそー。軽く捻っただけっぽいけど、よく折れなかったな?」

そんな簡単に折れないし!!

「…本当に悪かった」

「え?」

「俺のせいでしたケガだろ?」

「そんなこととないよっ私だって足元見てなかったし」

「…本当に最低だ。俺」

「桃くん? そんなに気にしないで。私は大丈夫だから」

「責任とらせてくれよ」

「は?」


責任?

何言い出すのこの人?!


「帰り、送るから」

「はい?」

「チャリで送る」

「別にいいよっ。大丈夫」

「送らせてくれ。明日の朝は迎えに行く」

「ええ? ホントに大丈夫だって!」

「あのなぁ」

タオルを退けて、湿布を貼りながら

「一番大事に想ってる女にケガさせたんだ。それくらいさせろよ」







































なんですって?

え?

えええええ?????





「ももくん?」

「よしっ! じゃあ教室戻るか」

と言いつつまた私を抱き上げようとする桃くんをどうにか止めさせて、肩を借りて教室に戻った。


さ っ き の 発 言 は 何 だ っ た の ? !


教室に戻る時も、授業が始まるまでの時間も、始まってからも
一切まったくさっきのことには触れないのですけど!(触れられても困るけど!)

ああもう、頭がグラグラする。
足の痛みよりももっとずっとタイヘン。

さっきの発言は何だったの?

そうこう考えてるうちに授業は終わった。(ノート真っ白だよ…どうしよう…)
すると、隣から桃くんが

「部活終わるまで待っててくれるか? 今日はそんなに遅くなんねぇし」

と言ってきた。
どうやら本気で送ってくれるらしい。

「1人で帰れるよ」

「送らせてくれよ?」

ああ…断れない。
そんな目(縋るような目)で見られたら断れない。

「本当にいいの?」

「おう! じゃあ部活終わるまで好きなトコにいてくれよ。後で迎えに行くから」

「はーい」


なりゆきで、一緒に帰ることになってしまった。

どうしよう。

ど う し よ う !

男の子と2人っきりで帰るのなんて初めてなんですけど。

いやいや待て、2人きりとは限らない。

桃くんは1年の越前くん(だと思う…)と一緒に登下校してたから(自転車に一緒に乗ってるの何度も見たことあるし!)越前くんがいるかもしれない!

むしろ、いてほしい! 2人きりは恥ずかしい!

とか思ってたのに…













「よっ! 待たせたな」




笑顔で駆けて来た桃くんはひとりでした。(嬉しいような! 悲しいような!)




















駐輪場に行くと、そこにはいつもと違う自転車が停まっていました。

「桃くん、いつもと違う?」
「昨日パンクしてさぁ」
豪快に笑いながらバシバシと自転車を叩いています。

赤のママチャリです。

きっとお母さんのなのでしょう。

「いつものチャリだったら2ケツできねーから今日はコレでよかったな」

ガチャンっとロックを外してママチャリにまたがり、後に乗れと催促しています。

どうしよう。この男。
ママチャリに乗ってても、カッコイイ……

促されるままに後ろに乗って
「しっかりつかまってろよ?」
というお決まりのセリフに ぎゅっ と抱きつくなんてことはできず
頑張って精一杯頑張って、桃くんの腰に手を添えた。
「落ちるぜ?」
なんて言ってるけど、ぎゅうってするくらいなら落ちます!
私は恥ずかしがりやなのですから!!


「桃ちゃん号発進っ!」


そう叫ぶと、自転車をこぎだした。

他愛無い会話をしながら、自転車をこいで

すぐに私の家の近くまで来てしまう。

この間、桃くんがスピードを上げて「きゃっ!(ぎゅっと抱きつく)」なんて、おいしい状況にならず、安全運転だった。(チッ)

さすがに家の前まで送ってもらうわけにはいかなくて…(近所の目がっ! 母親に見られたりしたらもうタイヘン!! からかわれるっ!!)
すぐソコを曲がれば家ってところで

「ここでいいよ。ありがとう」

止めてもらって、おりる。
あとは足ひきずって帰れる。大丈夫。うん。

「なぁ?」
「ん??」

ママチャリにまたがったままの桃くんがジッと私を見て

「明日何時に迎えに来ればいい?」
「ええ? いいよっいいよっ! 大丈夫だから」

だってだって、そんなことまでしてもらうワケにはいかないしっ!
それに

「一緒に登校したりしたら皆に誤解されちゃうよ」(私は嬉しいけどっ)

「…………もしかして通じてない?」
「??」
「はぁ…マジかよ」

桃くんが溜息ついてます。
んん??
どうした?

「俺は何とも想ってねぇヤツにここまでしねぇよ。送るくらいしても迎えにはこねぇし……」

……。
…………こっ…これはっっ!

「だいたい昼に言ったのでなんでわかんねーんだよ」

顔を真っ赤にして、頭ボリボリかきながら言ってる。
昼って……アレ? アレか!!

「まぁ男らしくハッキリ言わなかった俺も俺だけどよ……その」

もしかして?
も し か し て !?

「俺は好きな女にしかここまで優しくできねぇよ……そのな」

ややややややややややっ
やっぱり?

「俺はが好きだ……ぜ?」

告白ってヤツっすかぁ?!
まままままままままままままままじっすか??

まままままままままままままままままままままままままじみたいっす!!

うわぁうわぁっ(混乱)

「もももももももっ桃くんっ」(右手を挙手)
「ん?」
「私もっ…私も好きだったりする……んですけど」
「……マジ?!」
「まじ」
「マジ??」
「まじ」




「やっべ…すっげぇ嬉しい」




私も、嬉しい。
うわぁ、どうしよう。ドキドキする。
ドキドキするよ。




「俺今顔赤くねーか?」
「ちょっと…」
「冷やしながら帰るとすっか」
「うん。気をつけて」
「ああ。っと明日迎えに来るからな」
「……うん」




とまぁ、こんな会話をして今日は別れました。




足を引きずって家に帰って咄嗟にしたことは

「……セーフ?」

体重計に乗ること。
これは…(私の中で)ベスト体重+500g…
まぁ…ヨシ。もう気にしない。
クヨクヨしてもしょうがない。







そんなこんなで今日という日が終わって、次の日ドキドキしながら桃くんを待ってたら


「ちぃーっす、


って名前を呼ばれて、ビックリして。
そのまま一緒に登校して、学校でも『』って呼ばれ続けて
1日で付き合いだしたことがバレたのでした。

そして私はこれから先 ずっと 桃くんの自転車の後を越前くんから奪取したのでした。






















***イイワケ***
3333hitの なぎちゃんサマ に捧げさせていただきます。
同学年設定とのことでしたが、いまいちビミョウでゴメンナサイです。
それだけではなく、甘々になっていないようです…。微甘くらいでしょうか?
お待たせしたあげくに謝りっぱなしのドリで、本当にすみませんっ(ペコペコ)
こんなのでよければ、もらってやってください。