初めて会った時には驚いた。
こんな人が存在するなんて。
綺麗なお顔に返り血。
喧嘩というか私から見たら暴行。
事件。
元々はソコに血まみれで倒れいてる彼等が悪い。
ひ弱そうな少年を路地裏に連れ込み、殴った後にお金を奪った。
そんな状況を目撃してしまい、誰かに助けを求めようとした時、彼は現れた。
私の横をヒラリと学ランが舞った。
無表情の彼はツカツカと歩み寄ると
ガッ
と、音がした。
その後には男が一人倒れている。
倒れた男の仲間が彼に襲い掛かる。
しかし、一分も持たなかった。
今はもう全員地に伏している。
完全な気絶。
意識は無いようだ。
私の目の前をひ弱そうな少年が駆けて行った。
助けてくれた彼にお礼も言わず。
彼は倒れた人の真ん中でダルそうに返り血を拭った。
そこで、私の視線に気付いたのか目が合った。
「何?」
綺麗な顔から綺麗な声。
背中がゾクッとした。
「……あの」
急に声をかけられ、反応に戸惑う。
別に自分が助けられたわけでもないのにお礼を言うのは変だ。
かと言って自己紹介するような空気でもない。
頭の中でグルグルと色々な言葉が回る。
「あっ、よかったらコレ」
散々脳内で慌てた結果、ポケットからハンカチを取り出した。
彼は無言。
アイタタタ。
外したか。と思った時。
「こっち! こっちです!!」
その声に振り返ると、警察官と駆けてくる人。
とっさにヤバイと思った。
彼は人助けをしたのに、この状況はどうにもこうにも彼が加害者にしか見えない。
グイッと彼の手を引っ張る。
「行きましょう!!」
私は彼の手を引っ張りズンズン歩く。
彼の顔は見ない。
というか見れない。
私ってば、何やってんの??
自分で自分にツッコみながら、歩いていく。
ただ彼をこの場から遠ざけたかった。
しばらく歩くと小さな公園があった。
そこで私は手を放した。
「ごめんなさいっっ」
勢いよく頭を下げる。
まだ彼の顔は見れない。
「急にこんなところまで引っ張ってきてしまって、本当にごめんなさいっ」
見えるのは公園の地面と、彼の靴。
「あっあの、えっと…」
彼の靴が動く。
あ、行ってしまう。
覚悟を決めて顔を上げた。
彼の後姿。公園の出口へ向かって足を進める。
このまま行ってしまったもう二度と会えなくなる。と思った。
たぶん同じ町に暮らしているから姿を見る事はあるかもしれないが、こんなに近く触れることができる距離というのはもう二度と無いと思ったら
グイッ
無意識に近かった。
彼の学ランを掴んでしまった。
肩にかかっていただけのソレはズルリと落ちる。
彼が振り向く。
また目が合った。
「それを放してくれないと帰れないな」
彼が言う。もっともだ。
「あの、私、っていいます。あなたのお名前伺ってもいいですか?」
人生初の逆ナンパ。
自分でも思っていなかった行動ばかりしている。
「……雲雀」
「ひばりさん」
名前を口にしただけで、心臓が飛び跳ねる。
「もういいかな」
やばいやばいやばい。
会話を続けないと彼は行ってしまう。
これは なんだろう。
今まで感じたことが無かった衝動。
「ひばりさんっ」
今度は名前を強めに言ってみた。
ああ、私、この人の事をもっと知りたい。
「すきかもしれないですっ。すきになるかもしれないですっ。すきになりたいです」
こぼれた言葉は告白だった。
きっと今私の顔は酷いと思う。
眉間に力が入っているのがよくわかる。
ひばりさんは変わらず無表情。
あー引かれてるなーと思っていたら。
「ワオ」
と一言。
わお?
「不明確な願望。そんな告白初めてだ」
無表情が崩れる。
口元だけだけど、フッと笑った気がした。
「キミ、おもしろいね」
心の中でガッツポーズ。
少しでも興味を示してもらえた事が嬉しい。
「あのっお友達からお願いしますっっケータイとか教えて下さいっっ」
「また今度、気が向いたらね」
って、おーい。
ひばりさん、それは拒否ですか
「今度っていつ会えるかわからないじゃないですか…会いたいから連絡先知りたいんですけど」
きっと連絡先を聞いても電話する勇気無くて、メールも文章考えるのに3日くらいかかっちゃうんだろうな。
「キミが会いにくれば会えるよ」
「え?」
「並盛中だから」
これは会いに来いってことと受け取っていいのかしら?
「本当に行きますよ」
ジッとひばりさんの顔を見つめる。
「おいで」
そう言うと、行ってしまった。
それが出会い。
そして今、私は。
並中前にいます。
ここのところ毎日。
今の所ひばりさんには会えていませんが、会えるまで頑張ります!!
「あ、また来てますよ彼女」
最近毎日現れる他校の生徒。
彼女の存在は校内で知られつつあった。
「毎日毎日何してるんですかね。風紀としては注意に行くべきですかね」
「いいよ。アレは僕を待っているんだ」
校門付近で挙動不審なを見て雲雀が言う。
「初めてなんだよね。見ず知らずの他人に触れられて手を上げなかったの」
校門から中を覗いてはパッと体を隠し、まるで変質者。
そんなを見て
「おもしろい」
雲雀が笑った。