オキシドール。
私にこんなあだ名がついてるだなんて知らなかった。
「英二、あなた自虐趣味なの?」
今日も元気にキズをつくってやって来た英二に溜息をつきながら消毒液をぶっかける。
「イタイイタイイタイッッ」
当り前だ。痛くなるようにしているのだから。
「のバカー(涙目)」
「バカはアナタ。マゾ猫」
「(ガーンッッ)」
「菊丸、あまりに迷惑をかけるな」
「あら珍しい。今日のお迎えは手塚なの?」
扉のところに手塚が立っている。
「否、迎えというか」
「ケガでもした?」
「否…」
心なししか手塚の顔が赤い気がする。
「英二、戻って。手塚はコッチ」
英二を押し出すと手塚を招き入れた。
廊下から
「ずーるーいーっ」
とワケのわからない英二の叫び声が聞こえるが無視。
「手塚、ちょっと」
私は手塚をベットに座らせると、額に額を押し当てた。
「っ!」
「手じゃ、わかりずらいのよ。……やっぱり熱ある」
体温計を取り出すと手塚に渡した。
「結構熱かったわよ。無理したの?」
「否、無理はしてない」
「テニスした?」
「ああ」
「朝練から?」
「ああ」
「その時から具合悪かったの?」
「ああ」
「それを人は無理というのよ」
ピピッ
体温計が鳴る。
手塚が体温を確認する前に奪い取る。
「8度9分……。帰りなさい」
「否、しかし」
「部活なら先生の許可いらないわよ。私から伝えておくから、熱が高いのにウロウロされる方が困るわ。帰ってあったかくして寝る」
「しかし」
「って言っても聞かないんでしょう?(この部活バカ)」
「部長が早退するわけにはな」
「…まったく仕方ないわね」
体温計を元に戻し、手塚の肩に手をかけると
力いっぱい押し倒した。
「っ! ?」
「寝て」
手塚をペットに寝かせると毛布を2枚かけ、冷蔵庫をあける。
「少しくらいココで休んで。で、部活終わるギリギリに戻ること」
「ああ」
「風邪ひきの熱だしの部長さんには、コレあげる」
手塚の前にプリンを差し出す。
「冷蔵庫で冷やしてたからおいしいはずよ。あと冷えピタ」
「…………」
「保健室の冷蔵庫、ちゃんと保健医に許可とって(脅したのだけど)使ってるんだから余計な詮索は必要ないわ」
「…………」
「いま笑ったでしょう?」
「い…や……」
「手塚、声が笑ってるわよ」
手塚が目を細めて笑うの、初めて見た。
「すまない」
「いいわよ。コレ食べたくなったら食べてね、甘いの苦手だったら私が食べる」
「…………」
「手塚(怒)笑いすぎよ」
「の知られざる一面が見れたからな。これじゃドールというか普通の女の子だ」
「……ドール?」
「ああ、あだ名だ。は知らないだろうが結構あるんだぞ」
「ふーん。どんなの?」
「保健室のお姫様、青学の白百合、オキシドール」
「姫とか白百合とかバカみたい。で、最後のオキシドールって?」
「消毒とかけたのだろうな。置いてある人形は何を思う、と書いて『置き思人形』 字の通りの意味だな」
「人形って……」
「のイメージとしてはピッタリだと思ったんだが」
「ふふっ手塚もバカね」
は知らない。
本当の意味。
置物の人形のように綺麗なあなたは誰を想う?
それが
のあだな
『オキシドール』
ガラッ
大きな音をたてて扉が開いた。
「手塚!!」
息をきらして入ってきたのはテニス部員。
ペットに横たわる手塚とその向いのベットに座っていたと目が合う。
「あら、皆……手塚がそんなに心配だったの?」
「……そうだよ」
と、不二が口だけ笑う。
「(嘘だな)すまない、心配をかけたな」
「手塚部長、びっくりしたっすよー」
「なんだ具合が悪かったのか(安心)」
全員がホッと息を吐いた。
「手塚ってちゃんと人望あったのね」
はにっこりと微笑んだ。
は知らない。
「手塚! 抜け駆けすんなや!!!!」
と皆が駆けて来たことを。
アンケートにて『保健室の女』の続きが読みたいという方がいらっしゃいまして
そういえば2を書くだけ書いていたなぁと思い出しまして、発掘しました。(笑)
コレ書いたの…1年以上前だよ…絶対……
私進歩してないなぁ…