「……ふしゅーっっ……アレ? フシュゥゥッ……はぁ、ダメだぁ」

「なにやってるんすか?」

■家訓■

いつもの放課後いつものテニス部。

フェンスの向うでテニス部マネで海堂薫の彼女であるが「ふしゅふしゅ」言って
いた。

「あぁっ海堂くんっ」

先輩?」

は顔を真っ赤にして海堂の顔を見つめ

「あっあのね」

何かを決心したように一度頷くと

「教えてほしいの」

と言った。



「手塚くーんっ」

大声で手塚に呼びかけると

「ちよっと海堂くん借りていい??」

と言い、了承を得ると海堂の腕を申し訳なさそうに引っ張って部室へと連れこんだ。

「なんっすか?」

海堂が言うと

「あのねっ」

顔を真っ赤にする。
これは

もしかして恋人モード?

などと海堂も顔を赤らめると

「ふしゅーってどうすればいいの?」

と真顔で訊いてきた。

「……?」

呆気にとられていると

「海堂くん、ふしゅーってよくやるでしょ? なんか出てるし、アレねやってみたいの」

ゴメンねゴメンねと謝りながら訊いてくるは可愛い。まるで小動物だ。

「……フシュゥゥッ…………これですか?」

はパァッと瞳を輝かせて

「そうっソレ!」

と微笑んだ。

「……これは…………」

海堂は困った。

いつも何気なく「フシュゥゥッ」をやっていたので、どうすればいいのかと訊かれても、
うまい答えがみつからない。

「……溜息……です」

としか言い様がなかった。

「溜息?」

は真剣に聞き入っている。

「はい……溜息です」

そっかぁと頷き「はぁぁぁ」と溜息をつきだした。

先輩?」

「はぁ。はぁ。はぁぁぁぁーっ…………できない」

は悲しそうに海堂を見上げる。

うっすらと濡れた瞳が海堂に突き刺さる。

「……ちょっと待っててください」

海堂は部室にを残し、飛び出した。


「乾先輩」

海堂が一目散に向ったのは乾の元。

「どうした? 海堂」

「フシュゥゥゥッの出し方教えてください」

海堂は乾のデータを頼ったのだが

「出ているじゃないか」

アッサリ言われた。

その通りだ。海堂自身ならいつでもどこでも「フシュゥゥッ」を出すことができる。

「いえ、俺じゃなくて」

「他人がってことかい?」

「はい」

ちょっと待ってと乾がデータノートを見出す。

「そんなの簡単だよ」

乾の隣から不二が顔を出した。

「不二先輩はわかるんっすか?」

「答えは一つ。ふしゅーはマムシの鳴き声(ニッコリ)」

海堂はズーンと項垂れた。

「悪い。データ不足だ。わからない」

乾の出した答に海堂ば更に項垂れる。

「もう……いいっす」

海堂はトボトボと部室に向って歩き出した。



「ふしゅっはぁー……ふしゅぅぅぅっ」

部室内ではまだが「フシュゥゥゥッ」と戦っていた。

先輩」

戻ってきた海堂に

「お帰りなさい」

はふわりと微笑む。

「すみません」

その微笑に海堂は謝ることしかできなかった。

「?? どうしたの?」

「フシュゥッの出し方……わからなかったっす」

項垂れたままの海堂にが近寄りポンポンッと頭を撫でる。

「調べてくれたの? ありがとう」

間近で見るはとても可愛らしく海堂の頬は熱を帯び赤く染まる。

先輩は……その……溜息なんてつかないでください」

「なんで?」

「溜息つくと……幸せが逃げるっていいますし」

「じゃあ海堂くん幸せ逃しすぎ」

「俺は……いいっす」

先輩が幸せならそれでいいっす。

「ダーメ。海堂くんが幸せじゃないと私、悲しいよ」

しょぼんとがうつむく。

「ふしゅぅぅ、ってアレ。私好きだよ」

「?」

「冬の白い息みたいで。だからね、夏だけどアレが出せる海堂くんスゴイって思うし、私
も出してみたいなって思ったの」

「……はぁ」

「それにね、不二くんが言ったの」

何を言ったんだ。あの魔王は(フシュゥゥゥッ)

「海堂家は全員ふしゅぅぅができないといけないって。ふしゅぅぅができないと彼女失
格・家にも遊びに行かせてもらえない・海堂家から嫌われるって」

ヲイッ コラッ 魔王!!

「あの、先輩……それは不二先輩の冗談です……」

「えぇっ?!」

「父も弟も何かしら吐きますが、母は吐きませんし」

「そぉなの?」

「はい」

「じゃあ私、彼女失格じゃない?」

「……もちろんっす」

「よかったぁ」

はぁぁぁと息をついた

「今度家来ますか?」

海堂が顔を真っ赤にして言うと

「うんっ」

はニッコリ微笑んだ。




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「もうバレちゃった」

「不二、あまりをからかうなよ」

一部始終を覗き見ていた不二と乾。

「でもリアルでしょ」

「海堂家の家訓か?」

「ははっ(ニッコリ)今度は大石家の家訓とか言って大石の彼女イヂメようかvv」

「……いいデータがとれそうだな」

2人はニヤリとほくそ笑んだ。





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ヒロイン……おばかさんです。
なんつーかバカップルができあがりました(汗)
不二様は他の部員の彼女も騙していくのでしょうか??
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