キラッて光った薬指の指輪。
高いものでは無いけれど
私の宝物。
■指輪■
「、今日なんの日か覚えてる?」
しっぽをフリフリ菊丸英二が私を見つめる。
「英二の誕生日」
全く心当たりがないのでテキトウなことを言ってみる。
「違うにゃっ(怒)は彼氏の誕生日も覚えてないの?」
「じゃあ、手塚?」
「(違う)どーして彼氏彼女の記念日に手塚の誕生日が出てくるのっ(怒)」
「じゃあ、大石と初めてダブルスを組んだ日」
「もーいいにゃっ(怒)なんか知らないにゃっ」
しっぽプンプン菊丸英二は去って行った。
「、今のは酷いんじゃない?」
私の後ろの席から笑いを帯びた非難の声がする。
「不二は今日何の日か知ってるの?」
いたって私は大真面目。
「知ってるよ。ヒントは記念日」
「記念日?」
思い当たる節はない。
「ヒントA普通は彼女が覚えてて、彼氏が忘れてる。そしてケンカ」
「わからないわ」
「だろうね。ならその反応が普通だよ」
いつものように不二がニッコリ微笑む。
「私は英二に謝らなければならないのかしら?」
「あやまるより、思い出してあげなよ」
思い出す?
私は記憶の糸を手繰る。
「英二みたいなのとみたいな人がこんな長く付き合えるなんてね。正反対の2人だか
らすぐ別れるかと思ってたよ」
不二周助という男は失礼な男。
言ってることは全くその通りなんだけど
ムカツク。
確かに私と英二は正反対。
私は英二みたいに『にゃ』とか言える人種じゃない。
私は英二みたいに感情を素直に表せない。
私は英二みたいに…………
「正反対だからこそ、引き合うのよ」
「ヒントBさっき僕が言ったことは?」
「…………あっ」
「わかった?」
「コンナコト……記念日になんかする価値あるの?」
「一般的には、ね」
「ありがとう」
私は不二に礼を言うと教室から出た。
「急がなくていいの?」
後から不二の声がしたけど、気にしない。
だって急ぐ必要がないもの。
私には英二がドコにいるか分かるもの。
だてに付き合いが長いワケじゃないわ。
こういう時、英二が真っ先に向うのは
「やっぱり」
大石のところ。
「(グッタリ)」
散々グチやら泣き言を言われたのだろう。大石の表情は疲れきっている。
「(プンプン)」
英二はまだ怒ってるらしく、フーフーとしっぽを立てている。
「英二、大石を困らせちゃダメじゃない」
「ふんっだ」
「(ふんだって……)さっきは悪かったわ。ごめんなさいね」
「っ思い出してくれた??」
パァッと英二の顔が明るくなる。
「ええ、思い出したわ。ごめんね大石、英二が迷惑かけて、もう連れて行くから」
「ああ、助かる」
「行くわよ、英二」
私はさっさと教室を出た。
「まっ待つにゃっっ」
英二が慌てて追いかれてくる。
ひとけのない階段脇まで来て改めて英二と向き合う。
「今日ってそんなに重要な日?」
「あったりまえにゃっ! もっもしかしてまだ思い出してない?? かまかけ??」
「思い出したわよ」
「よかったにゃー。で、今日き何の日だ?」
「私達が付き合い出して、まる1年」
――そう
1年前の今日、私は英二に落とされた。
「正解――☆」
英二が瞳を輝かせて私に飛びついて、そして軽く口付けた。
「英二、場所は選んでって言ってるでしょ……んっ」
言い終わらぬうちに今度は深く深く唇が重なる。
英二の舌が無理矢理私の唇をこじ開け、入ってくる。
「んんっっ…はぁ」
英二の唇が離れると口内に異物を感じた。
「記念のプレゼント」
英二が耳元で囁く。
口から出てきたのは
「指輪?」
「左手の薬指限定ねっ!」
「……もっと普通に渡してよ」
「―っ喜んでくれないの??」
「口の中が鉄くさい」
「(うっ)お金なかったんだにゃ」
「……英二、ありがとう」
私は制服のリボンで指輪を軽く拭くと薬指に指輪を落とした。
「英二……」
「にゃっにゃに??」
私の静かな怒りを含んだ声に英二の笑顔が引きつる。
「英二、アナタは私に……太れと言うの?」
「ぅえぇぇ?!」
英二の目の前に薬指にはめられた指輪が光る。
「これを見て、英二はどう思いますか?」
「ぶっぶかぶかだにゃ」
「仕方ないから、コッチね」
私は薬指から抜き取ると、薬指にはめた。
「右ならピッタリ」
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菊丸センパイがウソくさい。
うぅ…(泣)精進します……
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