この関係は何だ?
と、問われれば説明しがたい関係。
友達以上恋人未満。
と言えるほどの仲でもなく
だからと言って
ただの友達
というわけでもないだろう。
友達以上……ではあるはず。恋人未満には程遠くても…
――そうだと…信じたい。
■魔王に匹敵するくらいの女と俺■
不二も常々相手に困っている(は天然だからな)が、俺も不二に負けないくらい困る…というか…頭を悩ませている。
という女は本当に厄介な女だ。
思えば出逢いは最悪だった。
同じクラスになった初日に
「ドリアン邪魔ーくさいー」
の暴言。
髪型を見てドリアン…(仕方ないじゃないか直毛なんだ)
ドリアンから連想して臭い。
このの発言のおかげで「部活をして汗かいてるから臭いんだ」という噂が流れたんだぞ。
撤回するのにどれだけの時間を要したと思っているのだか…
まぁそんな女にいつの間にか心を奪われていたのだから俺はかなりの変り者だろう。
そんなの性格は変だ。
断言できる。
悪いわけではないのだが、おかしいのだ。
楽しいことが大好きで、友達が大切。
と言えば聞こえはいいが、俺から言わせてもらえば
他人で楽しむことが大好きで、友達はオモチャだから大切。
と言った感じだろうか。
それでも周りに人が集まるのはサッパリしすぎた性格・表裏の無さ
それと
無邪気な笑顔。だろうか。
の笑顔が一番タチが悪いと思う。
明らかに何かを企んでいるのだが、ニッコリと微笑まれるともうダメなんだ。
何が起ころうと受け入れなければならないと暗示をかけられる。
抵抗は無意味。(多少は試みるものの結局無駄なんだ)
常に感情全開で楽しければ笑い、誰かが傷つけられれば激怒する。
そんなが最近感情を押し殺しているのは、きっと――…
の為。
「さだはるぅ」
机に突っ伏し甘えた声で俺を呼ぶ。
「どうした?」
「……我慢。限界だよ」
ポツリとは呟いた。
我慢=。
不二と別れたは無理をしていた。
不自然な笑顔。泣いたのか腫らした瞳。
それが我慢ならなくなったはの為に自分が悪役になった。
無理して押し込めていた心を解放する為に…
そして
大嫌い。
と言われたらしい。
それが昨日のこと。
自分のした事によってを泣かせてしまった。
そして「大嫌い」
こうなるとは予想はしていた。
そう、俺に言っていた。
しかし実際そうなるとの落ち込みようは酷いものだ。
昨日の放課後は放心状態。
その後、愚痴。
そして最後には
泣くかと思っていたのだが
は怒った。そして暴れた。
それはもう大惨事。
放心状態のを引きずってつれて行ったのが自分の部屋だったからまだいいような…(どこかの店で暴れられるよりはマシだ)
散々暴れたは落ち込んだ。
「もっといい方法…あったよね。絶対」
そう呟いた。
確かにもっといい方法はあったかもしれない。
が、しかし
今すぐに出来ることはコレだけだったと思う。
そんな感じではまだ浮上できていない。
欠乏症と言ったところか。
1日で我慢の限界らしい。
「と不二、うまくいくかなぁ? また笑ってくれるかなぁ?」
むくりと起き上がる。
今度はが無理した顔。
まったくこの2人は…
「と私……また一緒に笑えるかなぁ?」
「大丈夫だろ」
「貞治が言ってもなんか安心できない」
「大丈夫な確立100%」
「……んー。その方が説得力あるよ」
「そうか?」
「うんー」
「……元気だせ?」
「げんきーはつらつー」
「……しょうがないな」
俺は立ち上がるとの手を取った。
「なーに? セクハラー。あーセクハラと六波羅って似てるよねー」
六波羅……
六波羅探題のことか?
似てない。
全く似ていないぞ。
「イイモノやるからちょっとついてこい」
「いいものぉ?」
俺はをつれて部室へと向かった。
もうすぐ部活の時間だが、まぁいい。
少々遅れても大目に見てくれるだろう。
部室の扉を開けるとそこには大石だけが居た。
軽く挨拶をすると俺はしゃがみこみベンチの下をのぞく。
そこには『菊丸エージ』と書かれた段ボール箱。
ソレを引っ張り出すと一瞬大石が「あっ」という顔をしたが、すぐにの様子がおかしいことに気付いて何も言わなかった。
「ソレなぁに?」
と訊ねるの目の前にドンとその箱を置く。
「好きなだけ食べろ」
箱のなかは全てお菓子。
英二の隠し財産。
「いらないよぅ。太れっつーんかい?」
「昨日からまともな食事をしてないだろう? 少なくとも今日何か食べているのを見ていないぞ」
「…見んじゃねーよ」
「ほら、の好きなポッキー」
目の前にポッキーをチラつかせると凄い勢いでソレを奪い取った。
「……食べる」
「よし。何か飲み物いるか?」
「いる」
ガサガサと箱を漁りお菓子を大量に取り出すと、全部開け食べだした。
少し安心する。
「あっ飲み物買ってくるよ。何がいい?」
そう言ってくれたのは大石。
気を使ってくれたのだろう。
「お茶。2リットルで」
「……2リットル? わ…わかったよ。じゃあ行ってくる」
大石は足早に部室から出て行った。
2リットルという言葉に疑問を感じながら…
皆知らないだろうがは夏場はよく飲むのだ。
この前2リットルのお茶を3本飲んでいた。
正直、驚いた。
まぁ、そんなことはいい。
「私ね」
そんな事を考えているとが話し始めた。
「私、が好きなのよ。一生ものの友達だと思ってるくらいの勢い。がいなかったら私まっとうな人間じゃなかったと思うよ」
まっとう……
……お前はと出会う前どんな人格だったんだ?
「と出会う前? そぅねぇ」
また人の考えてること読んだな……
「あだ名は『揺籠』だったかな。なつかしいわぁ」
ゆりかご?
以外と可愛らしいあだ名じゃないか。
「少しずつ人をいたぶるタイプだったから。きゃは★ このあだ名考えた奴凄いよね〜」
ちょっと待て、。
もしかしてアレか…
その揺り籠は鉄の籠の中に無数の……否これ以上は語りたくない。
……お前はなんて人間だったんだ?
「まぁイロイロあって私はに救われたわけよ。まっさかそのにあんな顔させるだなんて…さぁ。もうヤになる」
「本当にはが好きだな」
の50分の1でいいから好意を俺に持ってはくれないだろうか?
まぁ無理だろうが…
「好きよ。大切。本当は不二にだって譲りたくないくらい」
「だってのした事わかってくれるさ。不二との関係が落ち着いたら話してみるといい」
「……うーんー。そうだね。そうする」
「ああ」
『そうする。』と自分に言い聞かせるように言うがなんだかとても脆く見えた。
思わず手を伸ばしそうになる。
しかし
俺にはその行為は許されていない。
モグモグと食べ続けるを見守ることしか出来なかった。
「んーっ満腹!」
英二のお菓子を食べつくすとは微笑んだ。
「じゃあ私はもう帰る」
「俺も教室まで一緒に行くよ」
「そぉ? じゃ行くべ」
少しだけ浮上できたのかの表情は先程よりかは明るい。
…気がする。
少しでもの気分を盛り上げようと色々な話をしながら教室へ向かった。
もう教室という所での足が止まった。
視線の先には教室を覗き込むの姿。
「……よかったな」
「なにが?」
「どう見てもはに会いに来た。違うか?」
「……」
「どうする?」
「……どうするも何もないよ。嬉しい。来てくれただけで、嬉しい」
「ほら、行って来い。俺は部活に行くから」
「教室…いいの?」
「後で来ればいいさ」
との仲直り。
そんな場面は絶対見られたくないだろう。
強がりな性格だから。
きっと何事もなかったかのように接する。でも顔はにやける。
そんな姿、今まで弱音をはいていた俺に見られたくないに決まっている。
じゃあ。と手を振り去ろうとすると
「貞治」
呼び止められた。
「私の昔のあだ名…知ってるの貞治だけだから。あのね、私前転校してきたのよ。だからあのあだ名は引っ越してくる前のあだ名でこの辺の人は誰も知らないの」
「秘密にしとけってことか?」
「そう」
「わかってる」
「も知らないことだから。秘密ね」
「わかってるって」
「貞治だけ特別。それじゃっ! 以上だ行ってよし!!」
ビシィッと氷帝の榊監督の真似をするとはに向かって歩き出した。
俺はというと
フラフラと歩いて階段まで来ると座り込んでしまった。
貞治だけ特別。
この言葉が頭のなかで回る。
のことだきっと深い意味は無い。
否でも『特別』だぞ?
気になる。
がしかし、考えてもの思考はわからない。
まぁいいさ。
これからもには振り回されてやるよ。
そしていつか堂々と『友達以上恋人未満』と言えるような関係になってやる。
そこからまた『恋人』までの道のりは長いだろうが頑張るしかないだろう。
という女に惚れてしまったが最後。とことん付きやってやるさ。
たとえ…地獄の果てまででも…
ということで、元カノ編さんと仲直り補足+乾さんと友達さんの関係ってどうなのよ?!
な感じでした。
はい。わかっていますとも。
ビミョウだと。
もっと乾さんと友達はラブなのよ! くらいの勢いで書きたかったのですが
無理でした。(笑)
でも書いてて楽しかったですーよー。
アコのなかでは乾さんと友達さんは『友達以上恋人未満』だと思っていますよー。
あー最後に『揺籠』って拷問道具デスヨー。
すみません。こんな事書いて。サラッと流しちゃってくださいー。ごめんなさーいー。