「今年の冬って暖かいね……僕は…………」

ある日の帰り道、隣で不二くんが何かを呟いた。

「はい? 何ですか??」

よく聞こえなかったので聞き返すと

「何でも……ないよ」

と不二くんが笑った。

はて?
何事ですか???

「本当に?」
「……うん」

お か し い …

何か変です。
いつもと変わらないけど何か変です。
別にケンカはしていません。
悲しいことでもあったのでしょうか?
イジメられ……るはずないですね。
イジメた? 誰を?
って、イジメて自分が落ちる??
落ちないです。
では何でしょう?
不二くん、今日、たぶん、落ちてます…

隣で笑っているけど、何か変。
わかるんです。
ずっと隣にいたから。
一緒に過ごしてきたから。

「不二くん」

私が名前を呼ぶと、不二くんは優しく微笑む。
そして私の瞳を見つめる。

「……何かありました?」

歩くのをやめて、不二くんと向かい合う。
不二くんは優しいから
私のつらい気持ち、かなしい気持ち、そんな重い荷物を半分持ってくれる。
なんとなく察して、私を助けてくれる。
でも
不二くんは私に不二くんの重いモノ、持たせくれない。
自分ひとりで全て背負って片付けようとする。
たまには
私がちゃんと気付けたときには、私にも、よりかかってほしい。
だって、一緒にいるから。
隣にいることを許してもらってるのは、私だけだから。

「どうしたの? 深刻な顔して」
「だって」
「だって?」
「不二くん、ちょっと変」
「変?」
「かなしいの? どこか痛いの?」
「んー……とくに無いよ」
「じゃあ、どうして落ちてるの? ……言いたくないならこれ以上きかないけど……でも」
「……びっくりした」

不二くんが苦笑する。

「『落ちる』か……すごいや、は」
「不二くん」
「確かに落ちてたかも」
「……どうしたの?」
「うん。心配してもらうような事じゃないんだよ。ただ」
「ただ?」
「……」

不二くんが目をそらす。
道路に向かって苦笑する。

「不二くん」
「……ごめん」

…………。
ごめん。って
言えないってこと?
私には入ってくるなってこと?
なんか ちょっと かなしいよ。

でも

不二くんの左手を私の右手でぎゅっとつかむ。
そのままグイッと引っ張り歩き出した。

でも、傍にいるから。
私はいつでも不二くんの傍にいるから。

ズンズンズンと数メートル歩いたところで
右隣から笑い声が聞こえた。

こらえきれずに、思わずふきだしたような笑い声。



優しく私を呼ぶ声。

「……何ですか」
「ごめんね。本当にくだらないことなんだ」
「……何がです?」
「落ちてた原因」
「……」

ぎゅうっと右手が強く握り返される。

「…………よ」

不二くんがぼそりとつぶやく。

「はい?」

小さすぎて聞き取れず、思わず聞き返してしまう。
すると不二くんは顔を真っ赤にして










「今年の冬は暖かすぎるから、手が冷たくなったって口実で手が繋げない……って思ってたんだよ」











なに この人!!!!!
乙女か??!!




「そんなことで?」
「はい……そんなことでチッと思ってました。軽く落ちました」
「ばか」
「はい馬鹿です」
「手、毎日つなご?」
「うん。あ、それと」
「はい?」
「寒いって白い息をハーッてするがみたかった」
「オッサンか!!??」
















軽く日常っぽいモノをと思いました。
ずっと書いてないものだから、書き方忘れ…てる…
やっべー
でも書かねば!いいかげん何か書かねば!!と思わせたのは拍手を送ってくれた貴方様です(笑)
久々にパソコンさわったよ……