華のようだと思った。
■彼女帰来■
『転入生』というのは嫌でも目立ってしまう存在。
しかも、この学校は私立。つまりいくら『義務教育課程』といっても編入試験なるものが存在していたりする。
その試験ってヤツが噂ではかなり難しく、高い壁らしい。
そんなワケ+この夏休み前。という中途半端な時期の編入生ということもあって彼女のことは瞬く間に学年に知れ渡った。
そして皆が口を揃えて言う。
「帰ってきたんだね」
その編入生という人は1年生の時にこの学園から転校して行った人だということで、記憶に残っている人も多いらしい。
しかも、『才媛』とまで言われた女性。否、それだけではない。『才色兼備』『大和撫子』『白百合』等。口から出る言葉は全て褒め言葉。
そんな人が
「よろしくね、さん」
ってな感じで私の隣に座っているのは何故なのでしょうか????
ええっとですね、今はですね、体育の授業中でして、そのですね、体育は隣のクラスと合同なワケですよ。はい。
で、その噂の転入生さんが隣のクラスに入られまして、そのですね(混乱)
授業が同じというのは分かりますよ。はい。
そこまでバカではないですよ。
でもですね?
しかしですよ!
何故に面識のない私(1年生の時関りなかったのですよ。だってだってクラス違うですし、すみませんっっ私名前すら知りませんっっ)にこうして話し掛けてくださってるのですか?
ついでに、今「さん」って言いませんでしたか?
どうして名前知ってるのですか????
「準備運動の相手、お願いしてもいい?」
「じじゅっ準備運動ですか???」
「そうなの。私のクラス奇数で……私あぶれちゃって」
うおおっ! 笑顔が可愛いっっっっv
困った感じで笑ってます。どうしようっ! この人すっごい可愛いですっっvvvv
「せせっ僭越ながら私でよければっ」(日本語変)
「ありがとう」(微笑)
ああっvvすっごい可愛い。
この人の笑顔、癒されるvvvv
「あのー」
準備運動をしながら訊いてみます。
「?」
「えーっと……どうして私の名前……あっ! そんなことより貴女のお名前教えてくださいっ」
私がそう言うと彼女はビックリしたように目を開いて、少し笑って、それから
「さんの名前、どうして知ってるか気になる?」
と、言ってきました。
まずは私の疑問に答えてくださるのですか!
やっ優しいっっvvvv
「少しだけ気になります。その…初対面ですし……」
「調べたの」
「え?」
「体育着の刺繍」(くすくす)
うぁっ! そうですっ。この体育着には名前が刺繍してありますっ!
どうりで!(関心)
あーっでも彼女の体育着は前の学校のモノらしく、名前が刺繍してないです。
あうっ…わかりませんっっ
「えーっと、苗字は見ての通りで、名前はっていいます。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
うわわっ。やっぱり凄い美人さんです。
終始笑みを絶やさない人ってこんな感じでしょうか。
顔は美人さんですし、物腰は柔らかいですしvv
「えーっと…それで貴女のお名前は?」
「思ったより遅かったね」
「そうでもないさ」
今は授業中だというのに、テニス部部室に数人の影。
不二を中心に乾、手塚、大石が集まっている。
あの手塚と大石も授業を放棄しているのだ。
ただごとではない。
「菊丸の発言から考えて丁度いい時期だな。早過ぎず、かと言って遅過ぎず」
「そう? 僕はすっかり忘れてたけど」
「(白々しい)そうだな。はすっかり忘れているかもな。不二と違って」
彼等が話している内容は、例の転入生について。
朝一番に情報が飛び込んできた。
「戻って来た」と。
それは誰の口からだったか?
職員室に立ち寄った部員からだったか? それとも一般生徒からだったか。
もしくは、彼女が誰かの口を使って帰ってきたことを知らしめたのか。
そんなことはこの際どうでもいい。
何より重要視するのは「帰ってきた」という事実だ。
そしてその目的はわかっている。
彼女は不二周助を取り戻しに戻ってきたのだ。
誰のものでもない、自分のものにする為に彼女は戻ってきたのだろう。
「どうする?」
この場にいる者は知っている。
彼女の危険さを。
「どうするも何も、僕はのものだし――それだけだよ」
それだけ。
その、それだけが彼女にとっては許せない真実。
「は知っているのか?」
「何を?」
「『転入生』が不二の元彼女ということ」
「知らないだろうね。今日はまだ会ってないし。昼休みにでも言うよ。近付いちゃダメって」
笑顔の不二に対して、一同の顔色は悪くなる。
「……不二、彼女はどのクラスに編入した?」
「え?」
はぁ。っと大石が溜息を吐く。
その表情は「どうして肝心な所を把握していないのだろう」そう言いたげだ。
「……さんの隣のクラスだよ」
静かに言うと、「やはり」と乾の表情が険しくなる。
「遅かったな」
「乾?」
「のクラス1時間目――体育だ」
「それが……あ」
「全て彼女の思惑通りか」
隣のクラスに編入したこと。
編入初日の1時間目が体育だということ。
その体育が合同授業だということ。
そしてという少女がお人好しだということ。
『転入生』の孤独を前面に押し出せば、という少女はホイホイとひっついてしまう。
「あの女――」
名前を口にするのも嫌だと言った感じで不二が呟く。
「に何かしたら許さない」
彼女の危険な部分を知っているからこそのセリフ。
危険。危険。危険。
そう思うからこそ、見落とす。
女を見縊っては、痛い目にあう。
彼女を敵視しているだけでは見落とす穴は沢山あるのだ。
いま、その一つが牙をむく。
もう、始まっているのだ。
愛という名の狂気が
想いは一方通行。だからこそ…………
穴は――ある。
「笹馳 錦」
笑みを浮かべ、彼女は言った。
「これから、よろしくね。さん」
華のような笑顔で。
――ただ、どんな華なのかは別として
***反省***
『笹馳 錦』と書いて『ササハセ ニシキ』と読む。
読み仮名ふり忘れ…
名前同じ方いらっしゃらないと思いますが…どうでしょ?
今回からギャグ路線ではなくシリアス路線になるのではないかと…
不景気なのにシリアス?!イタターッ(関係ない気がします)
では頑張って続き書きます。
ちなみに元カノの名前は米です。(『馳』は誤魔化す為につけたの)
友達のデフォ名も米です。(笑)