ここ数日、実にの機嫌が悪い。(乾)





「眉間に皺を寄せていると手塚みたいになるぞ」
という乾なりの精一杯の冗談を言うと
「うっせーバーカ」
の一言で片付けられた。


はおもしろくない。
何がというと

のバカがさー」

そう。原因は

「よりにもよって」

は忌々しそうに顔を顰める。

「笹馳錦にベッタリなのよ」
「知ってる」

誰もが忠告をした。
「笹馳錦には近付くな」と。
でも

「錦ちゃんはいい子だもん。酷いこと言わないで」

の一点張り。

もうのなかで『笹馳錦』という人物は『危険人物』でもなければ『不二の元カノ』でもなくて『友達』なのだ。

は、バカだから…だから……トモダチって一度でも思っちゃったら、もう何も聞こえない。あの女がどれだけ嫌な奴でもだけは味方になっちゃう」

全くもって完敗だ。
ここまで上手くを虜にするとは思っていなかった。

敵視はしても、仲良くなるとは誰一人として予想してなかったのだ。

敵対してくれれば周りが手を出せる。
しかし
同盟を組まれれば周りが何かをする度に結束は固くなるのだ。

「さっきなんかあのバカ娘私に向かって「きらーい。錦ちゃんの悪口言う人みんな嫌い」って言ったのよ?!」
「落ち着け」
「落ち着けるかっての! を取られたってだけで気に入らないの。しかもあんな女にっ!! 私、笹馳って嫌いよ。だって、全部が嘘くさい」
「嘘?」
「偽りの仮面を被った女だとしか思えない。この前見に行ってそう思った。笑顔、会話、全部全部ウソ。に対しても全部そうだよ。きっと」


そう思っても、には言えない。

言えば言う程、のなかでの信頼の重さが変わるから。

言えば言う程、笹馳にのめり込む。

言えば言う程、私達からは離れる。




「あの女、何考えてるの」
「データ不足」
「役立たず」
「すまないな」

「……絶対、絶対を悲しませたくないの」
「ああ」
は……私の親友なのよ」
「知ってるさ」
























































!」

呼ばれた声に振り向くと

「不二くん?」

レギュラージャージに着替えた不二くんが走ってきました。

「どうしたのです?」
は今から図書室?」
「はい」
「そう――あー…えーっと」
「どうかしました?」
「いや、いいんだ。じゃあ帰りに」
「はいv」

最近やたらと不二くんが会いに来ます。
朝、休み時間、放課後…
いっぱい会えて嬉しいのですが、微妙な気もします。
用事も無いのに会いに来るなんて。

お か し い !

理由はわかってますけど
たぶん(というか絶対)
錦ちゃん関係。

不二くん達は錦ちゃんのことを誤解してるから
私がいくら「錦ちゃんはいい子よ!」って言っても聞く耳持ってくれないの。


「変なの」


時計に目をやるともう図書室を開けなければならない時間。
「うわわ」
私は急いで図書室に向かいました。














「じゃあ私は書庫に行ってるね」
「はいです」

図書委員の仕事は2人でするというのが原則なのです。
たまに私1人の時もありますけど(笑)
今日は隣のクラスの方と一緒です。その方は書庫の整理に行かれましたので、私はカウンターで貸出カードの整理やら何やらです。

ゴソゴソと机を漁っていると

さん」

頭の上から声が降ってきました。
綺麗な声。

「錦ちゃんv」
「暇だから来ちゃった」
「大歓迎ですvv」

にっこりと笑みを浮かべた錦ちゃんが立っていました。

「えーっとえーっと私、仕事しながらしかお相手できませんが…」(汗)
「いいのよ。近くで喋っていていいかしら?」
「もちろん」

錦ちゃんはカウンターに寄りかかると頬杖をつかれました。
それだけで絵になってしまうほどです!!

「私の顔に何かついてる?」(くすくす)
「いっいえ!」

パッと視線をそらし手元の作業に集中します。

「ねぇ?」
「はい? 何でしょう??」
「私ね、さんのことを大事な友人だと思ってる」
「はいv」(照)
「だから正直に答えてね。さんは好きな人いる?」
「え?! あっえーっと…はい」
「そう。私も、いるの」
「そうなのですか??」
「命かけて好きな人」
「いのちかけて?」
「そう、私の全てをかけて好きな人」

微笑んでいた顔はいつの間にか、消えていて

「その人に会うためだけにココに戻って来たの」

その顔は怖いくらいに真剣で

そして

「誰にも――渡さないわ」

美しかった。





「誰にも?」
「そう、さんにも」
「え??!!」

私が驚くといつもの微笑みに戻って

「もし、好きな人が同じだった場合はね」

錦ちゃんは言いました。



同じって……
そんなの、あるわけないのに。

だって私が好きなのは不二くんですし。
錦ちゃんと不二くんは別れてますし。
ということは錦ちゃんは『次の恋』ということになりますよね?
でしたら同じになるワケありません。(自信満々)




「そうだ。私ね読みたい本があるの。ココにないかしら?」
「え? あっはい。えーっと書名わかりますか?」
「ええ」
「でしたら調べられます」
「ありがとう、確かね…………」
「ちょっと待ってくださいね。えーっとえーっと」(ガサゴソ)

錦ちゃんが読みたいと言っている本は凄い難しそうなタイトルでした。(汗)
あるでしょうか????


「……さん、明日」
「はい?」


調べる作業を中断して錦ちゃんを見上げます。


「時間あるかしら?」
「え? はい」
「大事な話があるの」
「は…い」
「いいかしら?」
「…はい」


断る理由も無かったのでそう返事をしました。






















後々、すごく後悔する。


その大事な話を聞いてしまったことを



























***反省***
今回不二様出番無いですね(笑)
ごめんなさーいっっ(>Д<;)
実はこれから先もあんまり無い…(殴)
いつかババーンと出てきますのでっ!