■想い、たくさん■
「別れよう。ね?」
まさか こんなこと を自分の口から吐くだなんて思ってなかった。
不二くんの顔からスッと笑みが消えて
「…どうしたの?」
思ってたとおりの言葉。
「……笹馳が……何かした?」
優しい言葉。
「そんなんじゃないよ。ただ」
こんなに優しい人を私は今から……
「ただ――…」
「ただ何?!」
グッと肩をつかまれる。
目の前には不二くんの困惑した顔。
笑顔の消えた顔。
笑顔を消したのは
私。
「…もぅ」
ごめんね。不二くん。
こんなこと、本当は言いたくもない。
「もう…うるさいなぁ…」
あなたの なか から私を消して。
なかったことにして。
こんな私は無かったことにしてください。
「もう不二くんには飽きたの。もう、うんざりって感じ。人間じゃないし、魔王だしっ。私は……」
幸せだった。
いつの間にか、大好きだった。
「私は普通の恋愛がしたいの。あなたじゃ…ソレを叶えられないでしょう?」
今鏡が目の前にあったら
私は世界で一番醜い顔を見るだろう。
不二くんも大事。
錦ちゃんも大事。
錦ちゃんは言った。
「かえしてくれないんだったら、周助殺して私も死ぬわ」
って。
こわいくらい、綺麗な顔で言った。
溢れる涙を凍らせるくらい、淡々と冷たく。
本気、なんだと思った。
それくらい不二くんが好きで、好きで、しょうがないってわかった。
錦ちゃんは大事な友達。
でもね
絶対、絶対誰にも言わないけど
何より誰より不二くんが大事。
だから
錦ちゃんの言った言葉が恐い。
もし
もし、錦ちゃんがあの言葉を実現させてしまったら…
そう考えると恐くて仕方ないの。
大事な人、二人も危険な目にあわせたくない。
不二くんにいなくなられたら、どうしたらいいかわからない。
でも、私と別れれば、いいんだよね。うまくいくんだよね。
『最後』だと言う錦ちゃんも幸せになれて。
恐いくらいの愛情は、優しいものになる。
それは絶対不二くんを傷つけるものじゃないと信じてるから。
だから
「だから、別れてくれる?」
「本気で言ってるの? 笹馳が何かしたんだろう? 正直に言ってくれよ」
「…えっと、ウザイんだけど。本当に違うし。しつこいと本気で引くんだけど…これ以上嫌いにさせないでくれる?」
「っ!」
「気安く名前呼ばないで。もうアナタにその権利は無いの」
「…頼むから…本当のこと…言ってよ」
そんな顔しないで
悲しまないで
私なんか、こんな最低なこと言う女、嫌いになって
「何度も言わせないでください。今まで、ありがとうございました。それなりに楽しかったです。でも」
お願いだから
私を見ないで
「でも、幸せではなかった」
ねぇ笑って
いつもみたいに笑って
私の選択が間違ってないのだと
アナタの笑顔で確信させて
「……」
「さようなら。不二くん」
貼り付けた様な笑顔でそう言うと不二くんに背を向けて、そして去る。
それで最後。
これで終わり。
「待ってよ! っ」
声を聞いちゃダメ。
立ち止まっちゃダメ。
後ろから聞こえる声を聞いちゃダメ。
「好きなんだ」
追ってくる足音に反応してはダメ。
後ろから抱きしめられる腕を心地いいと感じてはダメ。
「はなしてっ! ちょっと、やめてよっ!!」
「好きなんだ! が好きなんだ! 好きなんだ!」
「…っ」
泣くなっ!
絶対泣くな。
不二くんの前で…泣いちゃダメ。
涙は絶対流さない。
流せない。
「私は不二くんなんかもう何とも思ってない」
それだけ言うと不二くんの手を払い除けて、歩き出す。
心が痛くて痛くて悲鳴をあげそうだけど
こうすることが一番イイコトだと思うから。
だから、ごめんね。
「どうしよう…嫌なもの見ちゃった…聞いちゃった」
「そうだな」
「なんでこんな時も乾は冷静なの?!」
「…性分かな」
「ムキィッ!」
「怒るなよ」
「怒るわよ」
「なぁ、」
「何よ?」
「どうする?」
「どするって…二人のあんな顔…見てらんないよ」
「同感」
「さて、どう動きましょうか…」
教室の片隅に隠れ潜むこの二人。
この二人が事態を動かす鍵となる。
久しぶりの不二様。
内容覚えてなくてどうしようかと思ってます…(殴)
アコさんふぁぃといっぱーつ!
最後に出てきた乾さんとさんがたぶんきっと(曖昧…)鍵になるはず…
たぶん…たぶん……