いつの間にか傍にいて
何でも言える。そんな人で

世界で一番大事な友達。

なのに

私は「大嫌い」と言ってしまった。





■ハジマリとオワリ。ソレカラ −後編−■





「馬鹿ね」

そうアッサリ錦ちゃんに言われた。




錦ちゃんとお話をした後、教室に戻るのもアレなので(苦笑)ただボーッと5限目が終わるのを待っていたのですが…

「何か…喋って」

という錦ちゃんの一言から
イロイロと喋っていたのですよ。
学校生活。家族の事。友達の事。
話しているうちにの事を――…

そしたら

「馬鹿ね」

の一言。

思わず苦笑してしまいます。


「わかってますよぅ。自分がバカってことくらい…」
軽く頬を膨らませる。

「子供じゃないのだからそういうのやめたら?」
頬に細く綺麗な指が押し付けられる。
ぷしゅーと空気が抜けた。

「馬鹿なのは貴方だけじゃないわ。さんも…よ」
も?」

私が錦ちゃんの顔を覗き込むと錦ちゃんはペシッと私のおでこを叩いた。
「…いたい」
「近いからよ」

「…どうしてもバカなのです?」
おでこをさすりながら問う。

「…どうして私が貴方の相談にのらなきゃならないのよ?」
「いいじゃないですか! 友達☆」

…………

「……ダメ??」
「…まぁ…いいけど……『馬鹿』っていうのは……」
「はい??」
「その前に…どうしてさんが『あんなこと』したか、貴方わかってるの?」
「……たぶん」

きっとは私の口から「不二くんが好き」だと言わせたかったのだろう。
言わせて、閉じ込めようとしていた気持ちを引っ張り出した。
逃げようとした私を、強引にでも立ち向かわせようと、怒ってくれたのだと思う。

「そう、だったら何も言わないわ。ただ」
「ただ?」
「自ら『悪役』になるなんて馬鹿だわ…って、そう思っただけ」
「悪役?」

悪役といったら……
ばいきんまん?
どろんじょさまとか????

「……貴方…今どうでもいいようなこと考えていたでしょう?」
「え?? そそ、そんなことないですよぅっ」

まま…まさか…
錦ちゃんも人の心読めたりするのでしょうか????
ああ、なんだか視線が冷たい…

「……結果的には貴方の為になるかもしれないけれど「大嫌い」とまで言われるようなことを自ら進んでやったのよ? 馬鹿だわ」
「そう…ですね」
「馬鹿になるくらい、貴方のことが大切なのね…さんは」
「え?」
「友達の為に嫌われるとわかっていて、大事なモノを窓から捨てるなんて…凄く勇気が必要だったと思うわよ。私だったらしないもの。そんなこと。相手が大切だったら絶対できないわ。嫌われたくないもの」
「……」
「謝るなら…早い方がいいわよ。時間を無駄にしてはいけないわ」
「そうです…ね」

錦ちゃんはサラッと言ってくれた。
私がしなきゃいけないことを。

「そうよね。謝るなら早いうちよね…」
「わかりましたっ! 私に」
――…」

錦ちゃんが私の名前を呼びました。
さっき一度だけ呼んでくれたけど、それからまた『あなた』に戻っていてちょっと悲しかったのです。
でも『あなた』の言い方がやわらかくなっていたので、それでもいいかな。と思っていたのですが、やっぱり名前の方が嬉しいです。

「はいっ!」
「そんなに元気いっぱいで返事しないでよ…」
「何でしょうか????」
「目を輝かさないで…」

錦ちゃんのこの顔は呆れています。

「あのね…悪かったわ」
「何がです?」

ああっ更に呆れた顔になってしまいましたっ

「…周助とのことよ」
「はい?」
「引っ掻き回して……ごめんなさいね」
「あーっそれなら私もイロイロごめんなさいですっ!」

錦ちゃんは何かを言おうと口を開いたけれど、きゅっと結んだ。
そのあとにもう一度口を開いて

「じゃあ…お互い様ってことで…」

そう言った。

「はいっ」

だから私はそう返事をした。
返事と同時にチャイムが鳴って、5限目が終わった。

「錦ちゃん…これからどうします?」
「…もう帰るわ。6限だけ出てもあまり意味ないし。それじゃあ…また明日ね」


また明日。


この言葉が凄く凄く嬉しくて

「はいっまたあしたっっ!!」

手を力いっぱいブンブンふって見送ると

「…うるさいわよ」

と怒られてしまいました。
でも、そんなこと気にせず手をふっていると錦ちゃんが立ち止まり、横を向きました。
何か喋っています。
どうやら誰かいるようで…

錦ちゃんは振り返ると私を指差し、そして軽く手をふるとクルリとまた背を向けて歩いて行かれました。

「?」

誰がいたのでしょう?
と思っていると、ヒョコッと不二くんが現れました。

「何してるのですか?」

私が問うと

「散歩」

と、はぐらかされてしまいました。
たぶん私達が心配で様子を見ていたのでしょう。
あまり深くつっこまないでおいてあげることにします。

「私はもう教室に戻るけど、不二くんは?」
「じゃあ、一緒に戻ろうかな」

にこっと笑うと不二くんは私の隣に。
別に手を繋いでいるわけではないのです。ただ隣を歩いているだけなのですが…
なんだかとっても照れてしまいます。

「あのぅ…不二くん」
「ん?」
とね、ケンカしちゃったの」
「うん(知ってる)」
「謝ったら…許してくれるかな?」
…」
「はい」

不二くんは立ち止まりました。

「今の発言。取り消し」
「え?」
さんが謝っても許してくれないって思ってるの?」
「…いいえ! でも」
「心配することはないよ。さんの仲だろう?」

不二くんは優しく笑うとポンポンと私の頭を撫でてくれました。
なんだか余計に照れました。





そんなことをしていたら6限目が始まってしまい、慌てて教室に戻りました。
私は授業を聞きながら、の事を考えていました。
授業が終わったらすぐに会いに行こう。
そして謝る。
そのことばかり考えてました。






でも、実際授業が終わってしまうとドキドキします。
あとはの教室に行くだけなのに。足がうまく動きません。
思えば、と本当にケンカしたのは初めてです。
些細な言い合いなんかはありましたけど…
こんなのは初めて。
となると
緊張します……

はやくしないとが帰ってしまう。

わかっていてもドキドキしてしまって…。

大丈夫だってわかっているのですよ?
友達ですし。
また2人で笑い合えるってわかっているのですが…

が……

緊張するものは緊張するのです。

もしかしたら告白するより緊張してるかもしれません。



ドキドキしながらの教室までたどり着きました。
そっと教室の中を覗き込むと

「あ…」

……いません。

の姿はすでにありませんでした。

ああ、脱力ってこういう時に使う言葉なのですね…

緊張の糸がプツンと切れてその場に座り込んでしまいました。

あーもー私のバカバカッ。
もたもたしてるから帰っちゃったんだよぅっっ





「なにしてんの?」


すると頭の上から聞き覚えのある声。

恐る恐る顔をあげると

「………さん」

さんって…気持ち悪い。なに? どうしたの?」

ハァッ? って顔のがいました。

……ここだけの話、怖いよ。さん。その顔。

「あの…えーっと」

「なぁに? ああっわかった」

「…わかってくれる?」

「はいはい。わかった。一緒に帰るのね? すぐに準備するから待ってて」

「えっあっうん」

「何? 違うの?」

「えとあのそのー」

あああああっ!!
もう緊張するっっっ!!!
私ったら半ば逆ギレ状態ですよ。

「なぁに?」

もうここは思い切って言うですっ




っごめんっ」

「なにが?」




なにがって…
ねぇ…さん…よぅ。

「だからえとその」
「わけわかんないことで謝らないでちょうだい! 私に謝られるようなことされた覚え無いわよ。ってことで、とっとと帰るぞ!」

なんだか拍子抜け。

…これもの優しさ。



「ありがとっ。だいすきっ」

ぎゆっと抱きつくと

「あつーいっっ!!!!!!」

ぺいっと投げ飛ばされました。
痛い…

「私ものこと好きよ。だからほらっとっとと帰るわよ。なんか乾がよからぬこと考えていたから…」

ああっ両想い…v

ん?

乾くんがよからぬこと?

「なんか今度試合あるから見に来いみたいなことをほざいていたのよ。そんなヒマないっつーの。ということでちゃん、その試合の日2人で遊びましょう。そうしましょう」
「え?」
「はい決定」
「え?」
「では乾に見つからないうちに帰ってしまおう、そうしましょう!」
「え? あっうん」




そんなこんなで、
今日も今日とて幸せです。





















「終わりよければ全てヨシってな!」
「そうだよ★」
ザブザブと何かの水音。









ん?
今、何か聞こえましたよ?
随分前に聞いたことのある声と音。


あ゛…


アレですか?
以前夢に出てきやがりやがったりしたアレですか?????

…………。

考えない。
考えない。
私は人間!
何もわからないっ!!
何も知らないっっ!!
ってことで何も聞こえなかった!!






でも…明日からちょっと不安……だったりします。
今の……声が…………。
まさか…戻ってきた????
考えないっ考えないっっ

はぁ…でもやっぱり不安……。

















ということで、元カノ編終了っ!
ってことにします。(笑)
さんと錦さんはいい感じのお友達になってくれればいいのですけど…
たぶん錦さんは必要以上の接触はしてこないんだろうなぁ。一匹狼タイプだと思われる。
でもまぁさんのお姉さん的立場になってもらうことでしょう。(出番があれば)

長かったですね。元カノ編。
アコ的にはこんなに長くなる予定ではなかったのですよ。本当に。
ただちょっと邪魔程度に出現する予定だった錦さん。
それがこんなに長いモノになるとは…(汗)
更新全くしてない時期があったとはいえ、元カノの存在発覚から1年以上(汗)
錦さん登場から11ヶ月(滝汗)
ギリギリ1年以内で終了。
やだわーもぅ。(笑)

サイト開設からずーっと続いているこの不二連載。
いつ終わらせればいいのかアコにもわからない(笑)
とりあえずまだ続く予定。
何も考えてないけどネ☆(ダメじゃん)
あー妖精さんが戻ってきますよー。それくらいしか考えてません。
それではっ  ε=ε=ε=ε=┌( ・_・)┘