最初に気付くべきだった。

マンガでもなんでも、こんなトコロに呼び出されたらほとんどが閉じ込められるじゃないっ!
迂闊―っの迂闊者―っっ
これじゃあ図書室に行けないーっ
っーかそれより出れないと午後の授業サボリ??
うっわーコワッ
次の授業って……うーあーっっ数学ダヨッッ
ちょっとラッキー♪ じっじゃなくて、わかんなくなるーっっこの頃授業進むの早いしーっっ

このままだと、私が発見されるのが用務員さんの放課後の見回りだから
出られるの……5時間後くらい??

もーっ最悪っっ
午後の図書室にも行けないーっっ(怒)

「はぁ……」


私は座り込んで助けが来る時を待つことにした。








「不二」
それは3年6組には珍しくもなんともない客。
乾貞治。
「なに? まだ部活には早いよ?」
いつものようにニッコリ微笑む。

「策士の名、失格かもな」
「それ、どういう意味?」
静かに不二の表情がかわる。

の友達が騒いでいるのが耳に入ってな」
に何かあったの?」
表情は一層険しくなる。

「昼休みからいなくなったらしい」
乾の言葉と同時に始業の鐘が鳴った。







6時間目はー英語だったかなー??
ノート見せてもらわなきゃダヨ。
はぁーぁーぁー(溜息)



なんといいますか

理科準備室って……チョット怖いです。

周りは標本だらけですし、狭いですし……

まだ体育館裏とか体育倉庫の方がマシです。(だって裏は閉じ込められないし、倉庫は授業や部活生が出入りするでしょうから)

第二理科準備室はめったに人がこないんです。
マジで。

「たしゅけてー」

窓もないから外に向かって叫ぶこともできません。

「はぁーっっせめて本があればヒマつぶせるのに……」
これ本音です。
閉じ込められた場所が図書室だったら狂喜乱舞です。
堂々とサボッて本が読めるのですから。


「うーっっコワイ」



なんかスッゴイ標本達に見られているかのようです。










「……たすけてー」














こういうとき
うかぶ
名前は…………






























「乾、悪いけど一緒に来てもらっていい?」
「仕方ないな……(データによると不二が魔王になる確率99.99%)」
「酷いことしたら、に嫌われそうだから」

バンッ

静かな午後に響く乱暴な音。

それは教室の扉を開けた音ではなく、屋上の扉を開けた音。

その先には少女が数人。

先程、を閉じ込めた少女達だった。

「やはりここでサボっていたな」
ふむふむとデータノートに何かを記す乾。

突然の来訪者にビクッと顔色が変わる少女達。
しかも入ってきたのが
『先程殴って且つ閉じ込めたの元彼氏』

は……ドコ?」

そう言い放つ不二の顔にはいつもの余裕の微笑みはない。
冷たい無の表情。

瞬間、彼女達の頭の中で言葉が変わる。
『先程殴って且つ閉じ込めたの彼氏』
もしかして、別れてない?
もしかして、不二君はに本気?

さまざまな思いが頭を駆け巡る。

は、ドコ?」


少女の一人が涙を浮かべ
「知らない知らない」
と首を振る。

少女達は寄り添うように集まると
「しらないっ」
「だって、私達のことバカにしたから」
「ごめんなさい」
それぞれ自分の弁護を必死にし始めた。

それを軽蔑するように一瞥すると

見てはいけないモノが目に入った。

一人の少女の左手の爪に付着した紅いモノ。

瞬時に判断できる。
それは『血』だと。


「不二…」
隣から乾の制止の声が入る。
「わかってる。そんなことしたら、に嫌われるから」

そして、ゆっくり口を開く。

はドコ」



















うかぶ名前は……

「……かーちゃん、とーちゃん助けて―っ娘ピンチよぉー」
「小林、山崎、トモに加奈―っ(友達)たーすーけーてー」







「たすけて」









「……………………………ふじくん」





















「はぁい」


ガチャッ
















ゆっくりと扉が開く。




そこには、いつもの笑顔の不二君。











「……………………………なん…で??」
「だって、呼んだでしょ?」


不二君はそっと私の目の前に膝をついた。


「ごめんね」



「……なに?」
不二君のキレイな手が頬に触れる。

「殴られた?」
「……うん」
「切れてる」
「……うん」
「痛い?」
「……ちょっと」

そっとそっと
私の頬を撫でてくれる。

「不二君、どーしたの? 今、授業ちゅ」

ぎゅうっ

不二君が優しく優しく
私を抱きしめる。

「守れなくて……ごめん」

   ……ちりっ

「べべべ別に、わわ私、不二君にまもっ守ってもらう資格なんて」
「……作戦だった」

不二君は私を抱きしめたまま言葉を続ける。

「ずっと会いに行ってて、突然行かなくなったら人間は本能で淋しいって思うから。
だから会わずにいた。の気をひくために」

「…………うん」

「策士失格って乾に言われたよ。全くその通り」

「…………うん」

「ごめん」

「…………いいよ。私が自分で買ったケンカだし」

「ごめん」

「謝らないでよ」

「ごめん」

「いいよ。私は大丈夫」



「なに?」

「大好き」

「…………ウソでしょう?」

「本当」

「嘘」

「本当」

「(魔王様の)戯言でしょ?」

「……どうすれば、信じてくれる?」


ホントはもう分かってたのかもしれない。
その声に余裕がないこと。

嘘じゃなく本当に私のことを想ってくれてるのかもしれないこと。

でもね

確信がほしかったの。


とくとくとくとく…………


不二君の腕のなか。
耳に響くのは不二君の心臓の音。


「ねぇ、もう1回言って」

、好きだよ」

とくとくとくとくとく…………

はやい…ね……。
ドキドキしてるの?
いくら魔王でも自分の鼓動まではあやつれないよね?

「ん……その言葉は信じる」


「好きだからね」



ちりちり する。
どうやら私は
火傷したみたい。



+++数日後+++

部活後のテニス部部室にて
「しかしも災難だったな」
「はいー。見事なまでにケンカを買ってしまいまして……なんかウワサに聞いたんですけど不二君、一般生徒の前で魔王になったとかならないとか」
グッと手塚君が黙る。
さん……知らない方がイイコトもあるんだよ」
「なんかコワイなぁ……大石君、顔ひきつってますよ」
センパイッッ」
慌てて桃城君が話に飛びこむ。
「あの日の不二先輩のことはいくら聞いても誰も何も言いませんよ。そりゃもうスゴカッタですから」
「でもさぁ、どうして不二先輩はアンナコトしたんすかね? 奴等つかえばイッパツで先輩の居場所くらいわかったんじゃないっすか?」
と越前君が横槍を入れる。
「そういえば、そうだな」
と乾君。
「奴等って?」

途端に皆さんが押し黙る。

「あぁ……妖精(使い魔)のコトですか?」

皆さんの顔色が悪くなってしまいました。

「修行させてたんだよ」

と魔王様ご登場。

「「「修行?!」」」
と全員が声をそろえる。

に躾しろって言われたからね。勝手に行動するなって教えこんで、折角だから全部
修行の旅に出させてたんだよ。失敗だったね、一匹くらいの護衛に残しとくべきだった」

皆さん(私を含め)の顔が青いです。
修行……デスカ??

誰も言えなさそうなので
わわ…私が
言わせていただきます。


「修行したってことは……レベルアップ?」
「モチロンだよ。妖精達、具現化できるようになったよvv」




…………マジですか



ツバメはいいとして(いいのかわかんないケド)
ヒグマも????


っーかシロクジラも????????



「なんなら見てみる(ニッコリ)」







「ぎゃ―――――――――っっっっっ!!!!!!!!!!!!」





+++余談+++

あの日(私がシメられた日)
不二君の荒れようは凄まじく
まさに魔王降臨。

私をシメたあの人達はあの日から人が変わったようにおとなしくなったとか。


乾君がコッソリ教えてくれたんですが
「不二はキミが絡むと人間じゃなくなるよ」
ですって。

嬉しいというか
なんというか

どうやら私は他の人から見ても本気で不二君に好かれているみたいで

どうやら
私も前ほど不二君のことが嫌いじゃなくて

なんつーか

あの勝負……

先がわからなくなってしまいました……










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閉じ込めれて助けに来る!
ってのはもう王道でしょう!!
やらなきゃ気がすまなかったのです。

ダメ? ダメですか??
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