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「どうしてセンパイに惚れたんすっか?」
■出逢い■
「突然おもしろいこと言うね、越前は」
これは部室での会話。
の全く知らない会話だった。
「失礼かもしんないっすけど、不二先輩から女の人に惚れるなんてなんかしっくりこないんっすよ」
1年ルーキーのハラハラ☆発言に3年達はドッキドキしながら事を見守る。
「そーだね。自分から好きになったのは始めてかもね」
「何か、あったんすか?」
「あったと言えば、あったかな」と越前リョーマの飲みかけのファンタを奪い取り飲み干す。
「不二先輩、ソレ俺のなんすけど」
「訊きたいことに答えてあげる報酬だよ」
そして不二は語り出した。
「1年の中頃だったかな。最初は、気にもとめてなかった」
にとっては災難(でもないような、あるような)の始まり
不二にとっては世界の始まりを
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今日も来てる。あの子は確か図書委員の子。
不二の視線の先にはオドオドした髪が少し短くてメガネをかけたがいる。
必死で隠れるように(隠れきれてない)コソコソしながら室内を窺っている。
時折顔がパッと赤くなり、シュンッと青くなる。
あぁ、スキな人がいるんだ。
普通にそう分かってしまう。
今時、他人に悟られるくらい恋愛感情を表に出す子も珍しいなと思いながら不二はジッとを見る。
そして視線の先の人物を割り出した。
ふぅん…アイツね。
それと同時に芽生えた感情。
「気に入らないな…」
確かにこの時、不二はに良くない感情を抱いていた。
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「じゃあ最初はセンパイのこと嫌ってたんすか?」
「そういうことになるね。嫌っていたというか気に入らなかったんだよ。あんな白い子は」
(その白かったさんが今ではあんなに逞しくなって…(ホロリ))3年心の声より抜粋。
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気付いてしまったら目にとまるモノ。
次の日からチョロチョロ教室にやってくるに嫌でも目が行ってしまう。
健気に一人の男を想って、一目見たくてワザワザやって来る。
それが気に入らない。
「ウザッ」
そう思ってしまう。
その彼女がオドオドしながら教室に近付いて来る。
告白でもするつもり?
などと考えていると
「きっ……菊丸君いますか?」
見当違いの声。
英二?
「にゃに? にゃににゃにー??」
すぐに菊丸が飛び出してくる。
そしてと言葉を交わす。
「あぁっっ」と菊丸の声がしたと思ったらペコペコと頭を下げている。
困ったように笑顔を向けては菊丸の頭をあげようとする。
その光景はとてもほほえましい。
数分もしないうちに菊丸とは別れた。
「やっちゃったにゃー(シューン)」
肩を落としながら菊丸が不二の目の前に腰を下ろす。
「どうしたの?」
「ずっーと前に本借りて……返し忘れてたんだにゃー。トクソク状もらったんだにゃー」
「で、なんでそんなに落ち込んでるの?」
「その…本の置き場所……」
「まさか忘れちゃったの?」
「ちちっ違うよぉっっ(焦っっ)本は借りたけど、図書室のなかで読んでて……それで」
「まさか、図書室内で無くしたの?」
「…………(シューン)」
「(バカだなぁ)で、図書委員さんに怒られたったトコ?」
「違うにゃっあの人ゼンゼン怒らなかった! それどころか笑って「いいよ、私が探しとくから」って言ってくれたんだにゃ」
つくづく白いんだあの子。
「で、英二は彼女に任せちゃったの?」
「そっそんなことないにゃっ! ちゃんと放課後一緒に探すって約束したにゃ!」
「部活はどうするの?」
「部長に言って遅れて行く……」
「ふーん」
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「えぇえ? あの時の図書委員サンだったのー?? だってメガネかけてたよー?」
「あぁ、近眼だから。今はコンタクトにしてるみたいだよ」
「そうなんだー。あとでちゃんとお礼言っとく」
興味があったのかレギュラー全員が不二を取り囲むように座り、話を聞いている。
あの手塚もだ。
「で、その後どーなったんすか?」
「好きになるキッカケっていうのはあまりにも突然なんだって身をもって知ったよ」
不二が笑顔で答えた。
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竜崎先生が言った。
「不二、すまないが菊丸を呼んできてもらえないかい?」
「いいですけど、どうしてですか?」
「ダブルスの練習をさせたいんだよ」
「じゃあ呼んできます(ニッコリ)」
「すまないね(あたしにゃ妖精はきかないよ)」
不二は笑顔で校舎へと向う。
その後姿は「僕をつかうだなんていい度胸だね」と語っていた。
「ありませんねぇ」
「ないにゃー」
一方図書室では一人+一匹が必死に本棚をあさっていた。
「あのっ菊丸君そろそろ部活に行った方がいいんじゃないですか?」
「ダメにゃっ俺が無くしたんだから」
「でも、テニス部って厳しいと聞いていますし……部長さんが怒るんじゃないですか?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。部長には言ってきたから」
「あのホントにいいんですよ? 私一人で探せますから」
「ダメにゃー(意地)」
「……あっあーっ! 菊丸君! ありました。ありましたよ本」
とが一冊の本を取り出す。
「ホントかにゃ?? よかったー(安心)」
「ハイ。ですから、菊丸君は部活に戻ってください」
「わかったー。ありがとにゃーっっ」
ピョンと飛び跳ねると慌てて菊丸は図書室から出ていく。
「みっ皆さんが可愛い可愛いと言うのがよくわかりましたデス」
先程取り出した本を本棚に戻すとまた、本棚を探し出した。
「英二」
「不二だー。どうしたんだにゃ??」
図書室前の廊下でバッタリと遭遇した。
「竜崎先生と大石がお待ちかねだよ」
「わわっ急がなきゃ」
走って向おうとする菊丸に
「本は見つかったの?」
と問い掛けると
菊丸はいつもの笑顔ではなく
少し困ったかのように眉をさげ
「まだ、図書委員サンが探してる」
と答えた。
「珍しい。英二が途中で投げ出すなんて(そんなトコだけはしっかりしてると思ってたのに)」
「……ウソついてまで、部活に行けって言ってくれたんだよ。そんな気持ちムダにはできないでしょ」
言い終わるとすぐに菊丸は走っていった。
「ウソ…ねぇ?」
興味本位で図書室の前まで行き、窓から室内を覗く。
「わわっきゃっっっ」
ちょうどが雪崩を起こしているトコロだった。
積み上げられていた本が一気に崩れ、小柄な女の子が両手を広げて受け止めようとするが雪崩に巻き込まれ床につっ伏す。
「!!(開眼)」
不二は思わず目を見開き
「イッター……(涙)うぁうっっ本さんゴメンナサイ」
崩れ落ちた本に土下座し、丁寧に拾い上げる少女を見て
「………っっ」
声が出ないほど笑った。
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「まっまさか心底笑って惚れたんっすか?」
「要約すれば、そうなるね」
(哀れ!! !! キミがおっちょこちょいだったか魔王に気に入られたんだ!)レギュラー心の声より抜粋。
その時
「しっつれーしまーす」
元気いっぱいに部室に入ってきたのは。
「竜崎先生に頼まれてた…プリント……持ってきたんですけど……」
の顔が引きつる。
不二を囲むように(崇拝??)座るレギュラー達。
そのレギュラー達が瞳でに物語る。
「うっわ……可哀想」
と。
「なななっなんですか????」
はいつでも逃げれるようにドアノブに手を掛ける。
「なんでもないよvvねぇ手塚」
急に不二によって話をふられた手塚が慌てて
「あっああ(汗)」
と答えたが、どう考えても不自然。あやしい。
「あああのっプリントはココに置いておきますのでっっ」
身の危険を感じずにはいられないがプリントを近くの椅子に置くと後歩きで部室から出ようとする。
「」
が、不二が逃がすわけがない。
「一緒に帰ろうか(ニッコリ)」
「…………(いっいや)」
有無を言わさずは不二によって拉致られた。
(! (合掌))レギュラー一同。
「ふふふっ不二君っっわわ私、もうちょっとお仕事残ってるからいい一緒には」
「本の整理? 手伝うよ」
みるみる顔色が悪くなるを隣に不二は思う。
皆にはヒミツ。
僕がを好きになった理由。
本当はあの後
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「あっありましたーっっっ!! ク-R-11」
廊下で笑いつづける不二の耳に飛び込んだの歓喜の声。
「これですvvこれが行方不明でらした本ですvv」
よかった、見つかったんだ。一安心すると。
「むむむっコッコレは……手紙ですか?」
ペロンと本の間から折りたたまれた紙が出てくる。
「たたったいへんデス!! はやく菊丸君に届けなければ」
ガタガタガッターンッッ
慌てた末に閲覧用の机に太もも付近を強打し、ついでにバランスを崩して椅子に手をつき、それでもバランスを取り戻せず椅子と一緒に床に散った。そしてメガネが遠くにとばされる。
「いいっいたい(泣)」
なんて、あぶなっかしい子なんだろう。
込み上げてくる笑いを必死で押さえ、廊下にうずくまる。
バッターンッッ
勢いよく扉が開き、左足を引きずりながらが飛び出してきた。
そして
「きゃぁぁぁっ」
悲鳴が響く。
「どどどっどうなされたんですか??」
「は?」
悲鳴をあげながら駆け寄ってきたに不二は驚いた。
「たたっ体調が悪いのですか?? あわわわわわ(混乱)」
「否、大丈夫だから」
「あわわわわ(混乱)えっと…」
は不二の前で
「さぁ!!」
と言った。
「?」
「乗ってください!! 僭越ながら私が保健室まで!!」
混乱して出した答えが『おんぶして保健室に連れて行く』だったようだ
「否、本当に大丈夫だから」
「いいえっ! 大丈夫です!! 同じ女の子ですからお気になさらずに!!」
オンナノコ??
よほど急いでいたのだろうはさっき転んだ拍子に落としたメガネをかけていない、それに加え夕暮れ時でほの暗い廊下。
そして、不二の中性的な顔立ち。
しかし、こんな間違いをするのはくらいであろう。
「さぁ!!」
やる気まんまんのに押し切られそうになったので
「じ…じゃあ、肩、かしてもらえる?」
さすがにおぶられるわけにはいかないので、苦笑しながら答えた。
「ハイッッ」
は真剣な顔つきで不二を支える。
そんな横顔に見惚れて
時折気遣って笑顔を向けてくれるの真っ白な優しさに
不二は毒気を抜かれてしまった。
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図書室でゴソゴソ本と格闘するに
「そういえば、アレなんだったの?」
不二は突然言った。
「アレといいますと?」
本の詰まったダンボールから顔を出し、不二の方に顔を向ける。
「さっき昔話しててね、英二が前本をなくしてに探してもらったんでしょう?」
「あぁ! そんなこともありましたね」
と再びダンボールに顔を突っ込む。
「その時、英二の手紙出てきたんでしょう? 英二からその手紙の内容聞きそびれてね(大嘘)」
「あーアレですかー? アレは手紙っていうか……今アレありますよー」
思いもよらない返答に少し驚く。
「宛の手紙だったの?」
「まさかっ。違いますよ」
ダンボールを棚にしまい、がカウンターの引き出しをさぐりはじめた。
1分もしないうちに
「これです」
不二の前に大量の紙の束が出てきた。
「これは?」
ふっふーと笑いながらは言った。
「図書室の宝物vv『リクエスト用紙』デス」
「……(呆)」
「これは生徒の皆さんが図書室に求めているモノの結晶なのですvv読みたい本をリクエスト用紙に書いていただければ司書の先生と予算によって本がいらっしゃるのですvv」
「そう……」
「ちなみに菊丸君のリクエストは『ドラゴンボール全巻』デシタ……司書の先生に却下されてしまいましたけど……」
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「ハイッつきました保健室デス」
「ありがとう」
「いっいえ! 困ったときはお互いサマです。えっと保健の先生もいらっしゃるようなので私はこれにて失礼いたします」
紙を握り締めて踵を返したを
「待って!」
不二は無意識に呼び止め
「名前は?」
訊いていた。
「です」
はにっこり微笑むとテニスコートの方へ走っていった。
これが出逢い。
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この2人の出逢いとはどんなカンジ
だったんだろうと思い書いてみましたら…
こんな出逢いかよ?!
書いた私がビックリだ。うん。
コレ時期は1年時ですけどクラスは
3年時と同じ(汗)
まぁ深いツッコミは無しの方向で。
ついでにひとつ。菊丸先輩がなくしてた本の
『ク-R-11』の『ク』は黒魔術の『ク』です。
これでどんな本を読んでいたかわかりますネ☆
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