幼さゆえの短絡思考
■告白■
その一言が青空に響いた。
「私、大石先輩のこと好きです!!」
大石秀一郎(中3)にとって告白されるということは珍しいことではなかった。
しかし、今回ばかりは特別だ。
部活中、大勢の前で、高らかに宣言されたのだ。
「大石やっるー♪」
などど菊丸が囃し立てる。
が、告白された張本人は固まったまま微動だにしない。
「それだけですっ失礼します」
前触れも無くやって来た微風は嵐を落として去って行った。
「あの……誰?」
大石はボーゼンとしたまま彼女の後姿を見送った。
「きっ緊張したーっっ」
所変わってテニスコートからかけはなれた校舎脇。
一人の少女が座り込んでいる。
彼女の名は。ついさっき大石に想いを伝えた少女だった。
「やっぱ変な子って思われたかなー??」
があんな告白をしたのにはワケがあった。
本当ならあんなバカみたいな告白はしたくなかった。
でも仕方がなかったのだ。
なにぶんワケがあるのだから。
ことの発端はではなく、大石にあった。
「ねーぇっ大石っさっきの子可愛かったねvv」
部活後の部室にて菊丸が大石にじゃれつく。
「あーっアレはびっくりしたっすよね。あんな告白始めて見たっすよ」
と桃城。
「インパクトはあったよね」
と不二。
「アイツ……知ってるっす」
と海堂。
「海堂あの子知ってるのー??」
大石の元から菊丸が海堂へとジャンプする。
その行為に眉を顰めつつ
「同じクラスのっす」
素直に応えた。
「ちゃんかー。大石知ってる子?」
「……いや」
大石が苦笑気味に応えた。
と大石には何の接点もなかった。
は長年大石に想いを寄せていたがそれを大石が知るはずもなく
学年も違えば委員・部活が同じというワケでもなく。
ただ同じ学校に在籍しているだけだった。
しかし
が急にしかもアンナカタチで告白へと踏み切ったワケというのは
大石の一言。
「大石ってにゃんで彼女つくらないのー?」
という菊丸の問いに
「好きでもない子と付き合えないよ」
と普通に返事した大石。そして
「好きーって皆の前で言ってくれるような積極的な子が大石には似合うと思うにゃ☆」
「英二……人の話きいてたか?」
「でも、そんな子が現れたらどーする?」
「そんな子って……そうだな……(恥ずかしいけど)気にはなるな」
↑の会話を偶然聞いてしまったは
「大石センパイに変な女としてでもいいから、私の存在を頭の片隅においてくれるのなら
ばっっ!!」
と告白を決意したのであった。
「あっアレ……かな?」
帰り支度も済み、部室に鍵をかけている大石が呟いた。
「アレってにゃににゃに??」
近くにいた菊丸が興味津々に大石の顔を覗きこむ。
「さっきの…さん」
「がどーしたの??」
「この前の英二との会話、聞いちゃったんじゃないかなと思ってね」
「俺との会話??」
「皆の前で告白ってヤツ」
「あーあーっアレかにゃーっっ」
大石は自分の一挙一動を真摯に受け止め
恥ずかしそうに告白してきたの顔を思い出す。
「可愛い子だった」
と呟いた。
「おーおーいーしーっっアレアレッッ! あの子、校門のトコにいるのちゃんじゃな
い??」
「えっ?」
菊丸に触覚……もとい前髪を引っ張られ校門を見る。
曲がってしまう直前に見えた横顔は間違いなくだった。
「行けーっ大石―っっ」
菊丸に思いきり背中を押され、前へつんのめる。
「英二??」
「気になるなら名前くらいちゃんと聞いてくるんにゃ☆」
「はやくしないと見失っちゃうぞ」と手をふる菊丸に苦笑すると
「そうだな」
と駆け出した。
今の今まで校舎脇で恥ずかしさと格闘していたは今だ赤い頬を押さえ歩いていた。
「すこしくらいは、大石センパイの頭に残ったかな??」
「あ゛―っっでもでも、変な女って嫌われたり呆れられたかもーかもかもー(泣)」
「う゛―っっでも告白しちゃったしー」
ウンウン唸りながら歩いていると
「さんっ!」
聞き覚えのある声で呼ばれた。
「??」
大石センパイの声に似てるケド、大石センパイは私のこと知らないし
とマヌケ面で振りかえると
「よかった。会えて」
微笑むその顔は間違いなく、間違えようがなく
「おおっおおおおおっおおい…し……せんぱっっ」
ポカンと口が開いてしまう。
ポカンと目が見開いてしまう。
「えっと……一緒に帰らない?」
と照れくさそうに言う大石に
「……」
ただただ顔を真っ赤にして頷いて
「あの…さ……名前、教えてくれる?」
「……です」
と(たぶん)答えることができたと思う。
これから先、友達を経て、大石センパイに『』って名前を呼ばれるようになるのは
半年後。
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ちゃんと大石センパイのドリが書きたいです。
続きモノで。
がんばります。たぶん…きっと…
ネタはある。うん。
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