誰に聞いたのか覚えてないけど、本人に聞いてないってことは確かで……

3月14日

私にとっては世界で1番勇気を使う日になるだろう。






3月14日が誕生日って知ったのは2月の始め。
知ってしまったからには祝う気満々で

それで

渋々バレンタインという一大イベントを無かったことにしたの。

だってバレンタインにチョコあげて
ホワイトデーにお返しもらって(たぶんくれるよ。たぶん)
もらっておきながら誕生日プレゼントを渡すってビミョウじゃない?

だからね決めたの。

バレンタイと誕生日、全部ひっくるめて
ホワイトデーに祝うの。

「榊先生、お誕生日おめでとうございます」

って。




でも、
それには最大の難関がありました。











「ぷれぜんと…どうしよう……」

榊先生は大人で私は子供。

趣味も違えば嗜好も違う。
ついでに私には経済力がない。
頑張ってお金を貯めたけど高が知れてる。

「どうしよう」

1ヶ月以上悩んだ。

結局答えは見つからない。


……跡部を…………ダッダメそれは犯罪だし」

つい、お金目的にダメなことを考えてしまう。

ガックンで…………あっ…でも……なんか訴えられそう」

ダメな考えばかり頭をよぎる。


「もぅっ、どうすればいいのよ」

最近考えることはコレだけ。
寝ても覚めてもこのことだけ。


「おい」


変なモノをあげて嫌われたくない。
だからといって友達にあげれるようなものをプレゼントするわけにはいかない。


「おい。聞いてんのか? テメ……おい! !!」



「あ? 何? 跡部?」


気がついたら目の前に眉間に深い皺を刻んだ跡部が立っていた。


「ほらよ」

「あ?」

「あ? じゃねぇだろ、バレンタインのお返しだ」

「あ??!!」

「うるせぇ。いらねぇんなら返せ」

「…………」

? どうした? ハラ痛ぇのか?」

「今なんつった?」

「ハラ痛ぇのか?」

「その前」

「バレンタインのお返しだ」

「ってことはまさか今日…ほわいとでー?

「お前どうした? いつにも増しておかしいぞ」

「跡部! サイフ貸して!!!!」

「あ?!」



事情を話すと跡部は大笑いした。


「お前、監督の誕生日祝うのか?!」
「うん!」
「いい大人が誕生日祝われて喜ぶと思ってるのか?」
「え? ダメかな?」
「駄目っーか……なぁ」
「もうっどうしよーっっ(混乱)」
「…仕方ねぇなぁ。いいこと教えてやるよ」
「なになになになになになになに?????」
「相手は大人だ。(しかも監督)モノの価値より気持ちを重視すんじゃねぇの?」
「ふぇ?」
「ガキじゃねぇんだ。値段に拘らないだろうし、そこまで鈍感じゃねぇよ」
「うあ?」
「しかしお前が監督に惚れてたとはなぁ」
「なっ!!!」
「バレバレ」
「うぐっ//////」
「ほら、行け。知ってるか? もう放課後だぜ」
「うえええ?!」
「お前今日ボーッとし過ぎなんだよ」


跡部にトンと背中を押されて慌てて私は教室を飛び出した。

そのまま学園を出て街を走り回る。

1番気持ちの伝わるプレゼントを探して。

時間は少ない。

テニス部の練習が終わる時間まで。









お花屋さんがあった。
薔薇がある。
榊先生に似合う花。
でも、となりにチョコンと座っている小さな花に目が行った。

お財布と相談をしてその小さな花を一株購入。

そして再び走り出す。


お菓子やさんがあった。
ケーキっぽいお菓子があった。

お財布と相談。購入。


「いちばん、気持ちがつたわるもの」

ソレを探して夕闇迫る街角を必死に走った。






















考えて、考えて
いちばん気持ちが伝わると思ったものを持って職員室に駆け込むと
そこに
榊先生の姿はなかった。

ドアからすぐの先生に訊ねると
「もう帰られましたよ」
と言われた。

はぁ。と溜息をつくと職員室に入り
榊先生の机に、小さな花とお菓子と手紙を置いた。

走り回って見つけたレターセットに
ひとこと

『お誕生日 おめでとうございます』

とだけ書いて。

余計なことは書けなかった。
『好き』とは書けなかった。
『名前』も書けなかった。

でも、なんだか満足だった。























次の日、急に榊先生に呼び出された。
内心かなり焦った。

だって昨日の今日だよ。
私がプレゼントを机に置いたって言わなきゃきっとバレないだろうけど
でも
なんかドキドキするでしょう?

「アレは…もらってもいいのか?」

「は?」

だと思ったのだが、私の勘違いか?」

「……えーっと」

「ビオラと菓子と手紙」

「びおら?」

「勘違いのようだな…」

「えっ…えっーと……その…わ…私です。はい」

榊先生はふっと笑みをもらすと

「ありがとう」

と言った。

もう、なんか、嬉しくて
たぶん(きっと)顔が真っ赤だったと思う。

歩いて行く榊先生の後姿を見つめながら
「あの花、ビオラっていうんだ」
と呟くと
「ビオラがどうしたんだ?」
後から跡部の声が降ってきた。
「榊先生にブレゼントしたの。ビオラとお菓子とお手紙」
「クッ…ガキ丸だし」
「笑うなんてシツレーねっ(プンプン)」
「まぁ、選んだ花がビオラってことだけは褒めてやるよ」
「なんで?」
「テメ…女だろ。花言葉で選んだんじゃねーのかよ?」
……気にしてなかった! もしして花言葉『大嫌い』とか『年寄り』とかだったりするの?! うわっどーしよーっっ」
「バーカ。『私のことを思って』だろ」
「…え?」
「監督もそれくらい知ってんじゃねーか?」
「うわ……。どうしようっ! なんか恥ずかしいよぉっ」
「知るかよ」






それから1ヶ月経って
榊先生からビオラが元気にプランターで育ったていると聞いた。

今度勇気をだして訊いてみようと思う。

「ビオラを見に行ってもいいですか?」








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なんかもう私が「逝ってよし!」
だなぁと思う今日この頃です。
はぁーあ…。
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