こういう時、白い制服って困っちゃうんだよね。
○自己紹介○
「おいっバカ! 何やってんだよ」
「いやー。ゴメンね」
謝る前に南に怒られた。
何が起こったのかと言うと、俺が食べてたアイス(チョコ)がペチョッと南の制服についちゃったんだよね☆
でも俺が悪いわけじゃないんだよ。
後ろから誰かが俺に激突してきてそのせいでペチョッといっちゃったんだから。
「っきゃーっごめんなさいですーっっ!!」
そんなことを考えてたら後ろから声がした。
口調はとっても檀くんな感じ。
クルッと振り向くと
涙目になった女の子がひとり。
「大丈夫?」
女の子には優しく優しく。
背の低いこの子に合わせて中腰になる。
「俺は何も痛くないから気にしないでいーよ」
「…えと…あの……」
なぜか口元を押さえたこの子は
「ごめんなさいー」
と謝り続ける。
「だから大丈夫だって。南の制服のことなら気にしなくていい…」
「ぶっ!」
女の子の涙はどうも苦手だからこっちは泣き止ませようと必死になってるのに後ろから南のふきだす声がする。
「南クン?」
「そっちの方が厄介かもしんねーぜ?」
ククッと笑う南と泣く女の子。
それでやっと気付いた。
あー。俺の背中もタイヘンナコトになってんだって。
部活はとっくに終わってたんだけど、また部室に戻った。
まだ夏服になったばっかで、ちょっと肌寒いかな? と思ったけど、男らしくガバッと制服を脱いだ。
脱いだからって上半身裸じゃないからね! 注意注意っ! ちゃんと着てるんだから!
で、背中を見ると
「…キ…キスマーク?」
ちっちゃな唇のカタチがいっこ。
「ごめんなさいぃ。私…おもいっきりぶつかっちゃったから…」
私が責任を持って洗いますっ! と女の子は言っている。
プルプルしてる。(手をあげて主張しているが緊張しているのか震えている…らしい)なんかこの子可愛い。
「千石にぶつかったその子が千石の制服洗うんだったら、俺の制服はモチロン千石が洗うんだよな」
「…………」
「洗うんだよな…」
「ああっあのあのっわわ私がどっちも洗いますので」
ハムちゃん(勝手にあだ名。ハムスターの様に小さく、ビクビクしているから)が俺の制服握り締めて、南の制服も! と手を伸ばしている。
「じゃ、一緒に洗おうか」
「え?」
「ふたりでいっしょのほーが楽しいでしょ。きっと」
俺がそう言って笑うとハムちゃんはポカーンとした顔で俺を見上げていた。
蛇口をひねり勢いよく水を出した。
そして南の制服をジャブジャブと洗う。
「……あのぅ」
隣で俺の制服を抱きしめたハムちゃんが言いにくそうにこう言った。
「今更…なんですが…制服ってこんな水洗いしてもいいんですか?」
「……あー。そっか。普通はクリーニングとかだね」
あははーっと笑う。
「まぁ、大丈夫でしょ。うん。大丈夫大丈夫」
「そう…ですか?」
「うん!」
どうせ南の制服だし。多少手荒にしても平気平気☆
ハムちゃんはホッとしたように笑った。
そして俺の制服の汚れをトントンと叩いて落としだした。
「落ちないヤツじゃないと思いますから…」
心配しないで下さい。とハムちゃんは言う。
「ねぇ」
そんなハムちゃんにひとつの疑問をぶつけてみた。
「おもいっきりぶつかってきたってことはよっぽど急いでたってこと? こんなことしてて大丈夫?」
まぁ普通に疑問に思ったから訊いたんだけど、ハムちゃんはピタッと体の動きを止めた。
あれれ〜? なにかイケナイ事訊いたかな〜?
「…だいじょうぶ…です」
ハムちゃんは小さな声で答えた。
んー?
顔がちょっぴり赤いのは気のせいかな??
って
も し か し て !!
「ねぇもしかして…」
俺がジィッとハムちゃんの顔を覗き込むと、ハムちゃんはまたプルプルしだした。
俺の勘、ビンゴ?!
「もしかしてぇハムちゃん南の事がスキとか??!!」
南に告る。または何かしらのアタックをしようとして俺が邪魔(自分で思ってしょぼん)しち
ゃて激突ドン☆ってことだ!!
「……」
ハムちゃんは俺の顔を見上げて固まっていた。
うおーっ! やったじゃん南!! こんな可愛い子がスキだって!! うらやましいなぁっこんちくしょうめっっ!
「……はむ…ちゃん?」
「あっハムちゃんっていうのはあだ名! さっき勝手に決めちゃった」
あははーっと笑うとハムちゃんはプルプルしながら、こう言った。
「わっ私…南くんの…ことは…その」
「照れなくていいよっ俺なんなら協力しよっか?」
「あのっ違って…その…」
「ハムちゃん?」
「私は…千石くんに…その」
「俺?」
「千石くんに私の名前を…知ってもらいたくて…」
「うん」
これって
もしかして…
「知ってもらうだけでも、嬉しいから…その」
やべっ
顔が笑いそう。
俺か…
そかっ俺でいいんだっ
「名前は? ハムちやんの名前」
「あっ…」
「名前知ったら友達っ! まずは友達からはじめよう」
耐え切れず笑みがこぼれる。
するとハムちゃんもにっこりと微笑んだ。
そして
「私の名前は――……」
名前変換無しっ!!拍手に置こうかと一瞬思いました。
恋愛に進展するまでにまずはお友達。
その『おともだち』1歩手前を書きたかったんです!
それだけ…なの。