「ありがとうございます!」
背の高い少年がペコンとお辞儀をする。
「こちらこそもらってくれてありがとーvv」
「えっそんな先輩がお礼言うことなんて一つもないんですよ?!」
部活前の部室で「はい」と渡されたバレンタインの贈り物。
それをくれたのが愛しのだったのでその感動といったら計り知れない。
「ちょたくん、このこと跡部君達には秘密ね」
は恥ずかしそうにポツリと言う。
「どうしてですか?(自慢したい)」
「だって…その……チョコあげたの……ちょたくんだけだから」
感動!!
いますぐ抱きしめてキスをしたい衝動にかられる。
「じゃあ、私もう行くね。部活頑張って、応援してる」
「はい!!」
上気する頬を押さえ駆けて行ったを見送ると、長太郎は大事に大事にチョコを自分の
ロッカーにしまった。
そう――――
絶対にロッカーにしまったのだが
ナイ!!!!
ロッカーの中を空にしてもナイ。
「……(どうしよう? どうしてだ? 何が起こった??)」
部活前確かにココにしまった。
部活後ロッカーをあけたら入っていない。
これは、ひょっとして
盗まれた!!!
「跡部先輩っっ!!」
「どうした?」
「盗難事件勃発です!!」
「……何がなくなったんだ?」
「……(先輩が秘密と言ったからチョコとは言えないな)…………愛です!!」
「頭冷やせバーカ」
「ちがっ! 本当に盗まれたんですって!!」
「愛ってアレやないの? 今日はバレンタインやし」
「あ? あー、なんだチョコか?」
「(忍足先輩余計なこと言わないでくださいっっ!)」
「誰にもらったんだ?」
「ほらほら言うてみい?」
「言えません!!(愛の約束ですから)」
トントン。
長太郎の肩が叩かれる。
叩いているのは樺地。
「?」
樺地は部室の隅を指差す。
そこでもぞもぞと動いているのは芥川慈郎。
「芥川先輩がどうかしたのか?」
その問いに樺地ではなく名前を言われた条件反射でジローが振り向く。
「もぐもぐもぐ」
きょとんとした顔で口いっぱいにチョコを頬張るジロー。
そしてその横には見覚えのある包装紙。
「芥川先輩……ソレ…………」
「ひょほ(チョコ)」
「どこから持ってきたんですか?」
「ほっはー(ロッカー)」
「誰のロッカーですか?」
「ふぉほえてない(覚えてない)」
「俺のなんですけど」
「ふぁしへ?(マジで?!)」
ブチッ
「一・球・入・魂!!!!!!!!!!!!!!」
黄色いテニスボールではなく椅子が舞う。
「球やない! 球やないで!! それを言うなら『一・脚・入・魂』や」
「止めろ、樺地(パチン)」
「…………無理です」
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バレンタインドリなの?とツッコミたいのは
私デス。
バレンタインなのに……
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