とにかく 間 が悪かったんだと思う。


「嫌い。嫌い! 英二なんか大嫌い!!」

「絶対、許さないから」

語尾に『にゃ』をつけない英二は本気。


お互い機嫌が悪かった。

だから

思考が短絡的。

誤解が生じていることに気付きもしなかった。














■ケンカ■






菊丸英二とは付き合いだして早2年。
些細なケンカはするけれどすぐに仲直りして幸せそうに笑い合っている校内公認のカップルであった。

――そう、今までは。

「菊丸、昨日部活だったよな?」
「ん? そうにゃ。いつもどーりだったけど」
「じゃあ…放課後、とは」
とは一緒じゃないにゃ。部活終わるまで待っててもらうわけにもいかないし」
「……そのな、言いにくいんだけど」
「にゃに?」
「昨日、がさぁ他校の男と歩いてたぜ」

これが事の始まり。


が浮気なんてするハズないにゃ」

そう菊丸は笑い飛ばした。


「…俺もこの前見たぜ」

と次々と証言があがると笑顔がだんだんと曇り出す。


「…確かめてくるにゃ」


そう言って教室を飛び出した。













一方のクラスでは

ちゃんタイヘン! 菊丸くんが女にキスしてたって!」
「はぁ?!」

何ソレ? とが立ち上がる。

詳しく話を聞いてみると『英二が告られていた』→『相手の子の頬にキスをした』ということらしい。

「英二のアホッ(怒)」
ちゃん落ち付いて!」
「落ち付いてなんかいられないよ! だってだってキスだよ?」

勢いよくドアを開けると

「怒ってくる」

教室を飛び出した。







この時、2人とも機嫌がすこぶる悪かった。




イライラした気持ちを緩和する時間があればまた違っただろうに

とにかく 間 が悪かった。

イライラ絶好調のまま、廊下で2人は鉢合わせした。


「話があるにゃ」
「私も」


刺のある言い方に2人とも眉を顰める。




廊下で小競り合うのはよくないので人気のない所に移動すると
一呼吸おいて
声が重なった。


「「…浮気した?」」


その言葉に2人の顔に苛立ちが目立つようになる。

「浮気ってそっちがしたんでしょ?!」
がしたって聞いたにゃ!」
「何ソレ?! ふっざけないでよ」
「ふざけてるのはだろ?! 男と一緒にいたって何人からも聞いたにゃ」
「知らないわよ! そんなことするはずないでしょう?」
「俺がテニスしてる間に別の男かよ? 信じらんねぇ」
「だから! 知らないって! ってゆーか英二こそキスしたんてしょう!」
「は?!」
「告白されて、その子にキスしたって! それってどーゆーこと? 二股?!」
「してないし!」
「だって見た子いるもん!」

2人の言い合いはだんだんと激しくなり

最後には

「もぅっ! だいっきらい!!」
「俺も」
「さいってい!!」
「お前がそんな女だとは思わなかった」
「嫌い。嫌い! 英二なんか大嫌い!!」
「絶対、許さないから」



こうして、2人はその場で別れた。

初めても大喧嘩。







2人は一週間経っても一言も会話をしなかった。


こうなればケンカしているのは一目瞭然。

そんな2人を心配していろいろな人が声をかけた。









菊丸英二の様子を見に行く